熊ノ平駅

熊ノ平駅

熊ノ平駅（くまのたいらえき）は、かつて群馬県碓氷郡松井田町（現・安中市松井田町）に位置していた、日本国有鉄道（国鉄）信越本線の駅です。横川駅と軽井沢駅の間にあり、碓氷峠を越えるための重要な拠点でした。

歴史

1893年（明治26年）4月1日: 信越本線横川～軽井沢間が開通。熊ノ平信号場が給水給炭所として設置され、列車交換設備も設けられました。この区間は単線であったため、列車交換が必要でした。
1901年（明治34年）7月13日: 矢ヶ崎信号場付近で、碓氷峠列車逆走事故が発生しました。この事故は、後の熊ノ平駅の歴史にも影響を与えることになります。
1906年（明治39年）10月1日: 熊ノ平信号場が鉄道駅に昇格しました。これにより、駅としての機能が強化されました。
1912年（明治45年）5月11日: 横川～軽井沢間が直流600Vで電化されました。これにより、電気機関車による運行が可能となりました。
1918年（大正7年）3月7日: 駅構内で列車脱線事故が発生しました。この事故は、多くの犠牲者を出す大惨事となりました。（詳細は後述）
1937年（昭和12年）7月: 熊ノ平変電所が設けられました。これにより、安定した電力供給が可能となり、鉄道の運行を支えました。
1950年（昭和25年）6月9日: 駅構内で大規模な土砂崩れが発生しました。この災害により、多くの死傷者が出ています。（詳細は後述）
1966年（昭和41年）2月1日: 熊ノ平駅は信号場に降格しました。これにより、旅客の取り扱いは廃止され、信号設備としての機能が中心となりました。
1987年（昭和62年）4月1日: 国鉄分割民営化に伴い、東日本旅客鉄道（JR東日本）に継承されました。国鉄からJRへと鉄道事業者が変わりました。
1997年（平成9年）9月30日: 北陸新幹線（高崎～長野間）先行開業に伴い、信越本線横川～軽井沢間が廃線となり、熊ノ平駅も廃止されました。これにより、駅としての歴史に幕を閉じました。
2018年（平成30年）8月17日: 旧熊ノ平変電所本屋が重要文化財「旧碓氷峠鉄道施設」に指定されました。この変電所は、鉄道の歴史を語る上で貴重な文化財として保存されることとなりました。

駅構造

熊ノ平駅は、相対式ホーム2面2線を有する地上駅でした。大正時代には上下線の間に中線が敷設されていましたが、第二次世界大戦後に撤去されました。信号場に降格した際にホームは使用停止となりましたが、現在も残されています。

碓氷峠の急勾配区間に位置するため、アプト式鉄道時代には、列車がトンネルに一旦入り、その後本線脇の押下線に後退して停車する、一種のスイッチバック構造でした。粘着式鉄道に切り替わってからは、複線化されたため列車交換の必要がなくなり、閉塞境界としての信号場の役割を担いました。

駅構内には、1937年（昭和12年）に設置された熊ノ平変電所があり、横川～軽井沢間の電化を支えていました。この変電所は、1962年（昭和37年）の粘着式への転換時に改修され、廃線まで使用されました。2018年（平成30年）には重要文化財に指定されています。

力餅

駅営業当時は、玉屋が力餅を販売していました。信号場降格後は坂本宿へ店を移し、「玉屋ドライブイン」として現在も営業しています。この力餅は、熊ノ平駅の歴史と共に語り継がれる名物でした。

事故・災害

構内列車脱線事故（1918年）

1918年（大正7年）3月7日、横川から軽井沢方面へ向かっていた貨物列車が、第20号トンネル内で異音を感じて緊急停車しました。再発車を試みましたが、列車は制御不能となり、急勾配を逆走し始めました。発電ブレーキが故障していたため制動できず、10箇所のトンネルを通過して熊ノ平駅の引込線に突っ込み、大破しました。この事故で、乗務員3名と駅員1名の計4名が死亡し、4名が負傷しました。この事故は、初期の電気機関車の技術的な問題点を示す悲劇的な出来事でした。

大規模崩落事故（1950年）

1950年（昭和25年）6月、碓氷峠周辺では記録的な降雨が続き、6月8日には熊ノ平駅構内で大規模な土砂崩れが発生しました。これにより、本線や突込線が埋没し、復旧作業中に2度目の崩落が発生。駅舎や鉄道公舎が倒壊し、駅長を含む関係者約80人が生き埋めとなりました。最終的に死者56人、重傷24人を出す大惨事となりました。その後、手作業での救出作業が行われ、信越本線は6月20日に開通、6月23日に完全復旧しました。この事故を教訓に、鉄道の安全対策が見直されるきっかけとなりました。

駅周辺

信号場降格後50年以上経っていますが、旧国道18号から駅へ続く階段の遺跡の一部が残っています。草が生い茂る夏場は見えにくいですが、秋から春にかけては確認できます。

周辺施設

碓氷第三橋梁（通称：めがね橋）
国道18号（旧道）
熊ノ平駐車場

隣の駅

日本国有鉄道

信越本線

横川駅 - （丸山信号場）- 熊ノ平駅 - （矢ヶ崎信号場） - 軽井沢駅

※丸山信号場、矢ヶ崎信号場は1966年（昭和41年）7月2日に廃止

現在のアクセス

JRバス関東碓氷線（めがねバス）：「熊ノ平駐車場」バス停下車、横川駅から20分、軽井沢駅から19分 ※季節限定・1日1往復
アプトの道：峠の湯から徒歩70分、横川駅から徒歩120分

脚注

注釈

出典

参考文献

宮沢清治「災害史シリーズ 気象災害史 (72) 鉄道廃線跡の殉難碑 昭和25年6月 碓氷峠の熊ノ平駅の土砂崩れ」『近代消防』、35巻13号、P.86-89、1997年

関連項目

日本の[[鉄道駅一覧]]
廃駅
峠駅 - 鉄道の難所にある点、スイッチバックがあった点で共通しており、こちらは現在も駅で力餅を販売している。
湯田中駅 - 2006年8月31日まで駅停車時に類似する入線方法を行っていた。

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