熊野神社 (鎌倉市)

鎌倉市に鎮座する熊野神社群：歴史と信仰の足跡

鎌倉市には、熊野三山（熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社）から勧請された複数の熊野神社が存在します。これらの神社は、鎌倉の地に根ざし、地域の信仰の中心として歴史を刻んできました。本記事では、鎌倉市内にある代表的な熊野神社について、その由緒や見どころを詳しくご紹介します。

熊野神社とは

熊野神社は、熊野三山を総本社とする神社で、全国各地に鎮座しています。熊野三山は、有史以前からの自然信仰の聖地であり、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて、皇族や貴族の熊野詣で信仰を確立しました。中世以降は、東国の武士や有力農民の信仰を集め、熊野三山の信仰を広めるために、山伏や熊野比丘尼が各地で神徳を説き、その過程で多くの熊野神社が創建されました。

鎌倉市の熊野神社

鎌倉市内には、以下の熊野神社があります。

熊野神社 (手広)

手広の鎮守社であり、かつては青蓮寺支院の寶積院が別当として管理していました。本地仏は如意輪観音とされています。創建の詳細は不明ですが、社蔵の棟札から、慶安元年（1648年）、万治元年（1658年）、天明8年（1788年）に在地領主によって造修が行われたことがわかっています。

交通機関: 江ノ電バス 鎖大師下車 徒歩3分

熊野新宮

極楽寺の鎮守社で、新宮社とも呼ばれます。『忍性菩薩行状略頌』によると、文永6年（1269年）に創建され、鎌倉幕府の崇敬を受けました。幕府滅亡後は足利氏の庇護を受け、足利直義が土地を寄進した記録も残っています。元々は熊野新宮のほか、八雲神社と諏訪神社の2社がありましたが、関東大震災で倒壊したため、1928年（昭和3年）に合祀されました。

交通機関: 江ノ電 極楽寺駅下車 徒歩5分

熊野神社 (浄明寺)

浄明寺の鎮守社で、勧請年代は不明です。応永年間（1394年～1427年）と永正年間（1504年～1521年）に社殿が再建されたと伝えられています。『新編相模国風土記稿』にも記述が見られ、文久3年（1863年）の再建時の棟札や嘉永7年（1854年）の銘が入った社号扁額が伝えられています。

交通機関: 京浜急行バス 浄明寺下車 徒歩5分

十二所神社

十二所の鎮守社で、近世には十二天社、十二天明神社、熊野十二所権現社とも呼ばれていました。創建年代は不明で、古くは光触寺境内にあったとされています。天保9年（1838年）に現在地に再建され、当時は氏子による土地や用材の寄進、土木開墾の奉仕によって再建されました。明治時代の神仏分離政策により現社名に改称され、1837年（明治6年）に村社に列せられました。

交通機関: 京浜急行バス 十二所神社下車 徒歩1分

熊野神社 (大船)

大船の鎮守社で、『相模風土記』によれば、天正7年（1579年）に甘粕長俊が束帯姿の木像を勧請して祀ったと伝えられています。木像は現在も御神体として祀られており、台座には長俊勧請の旨が記されています。明治期の神仏分離までは、隣接する真言宗寺院の多聞院が別当を務めていました。

* 交通機関: 江ノ電バス 常楽寺下車 徒歩 5分


これらの熊野神社は、それぞれ異なる歴史と特徴を持ち、鎌倉の歴史と文化を今に伝える貴重な存在です。鎌倉を訪れる際には、ぜひこれらの神社を巡り、その歴史と信仰に触れてみてください。

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