燕温泉

燕温泉

新潟県妙高市、妙高戸隠連山国立公園の深い緑の中に佇む燕温泉（つばめおんせん）は、妙高山の東麓、標高およそ1100メートルの高所に位置する山間の温泉地です。

泉質とその恵み

この地で湧き出る温泉は、含硫黄-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物温泉という複雑かつ個性的な成分を含んでいます。源泉温度は43.5℃と湯温も適度で、湯船に注がれると薄い乳白色に変化するのが特徴です。硫黄の香りをほのかに感じながら、肌触り柔らかな湯に浸る時間は、まさに自然の恵みを享受する至福のひとときと言えるでしょう。

山麓の静かな温泉街

妙高山の懐深く、なだらかな斜面に沿って形成された温泉街には、現在5軒の旅館と2軒の土産物店がひっそりと軒を連ねています。妙高山周辺に点在する温泉地のなかでも、最も高所に位置するのがこの燕温泉です。バスの終点から始まる狭い道沿いに、建物が寄り添うように立ち並び、それが独特の情緒ある、こぢんまりとした温泉街の雰囲気を醸し出しています。かつてはスキー場も近隣にありましたが、現在は閉鎖され、より静かな山里の風情が増しています。ここはまた、妙高山への登山口の一つでもあり、多くの登山者が疲れを癒しに訪れる拠点ともなっています。

山道の先の無料露天風呂

温泉街のさらに奥へと進むと、無料で入浴できる二つの露天風呂が現れます。これらは妙高山の登山道ルート上に位置しており、自然の中で開放的な湯浴みを楽しめます。

黄金の湯: 温泉街から徒歩約5分と比較的近く、男女別の脱衣場も完備されているため、気軽に立ち寄ることができます。渓流沿いの自然に囲まれながら、秘湯気分を味わえます。
河原の湯: 黄金の湯からさらに進んだ場所にあります。より自然に近い形で湯を楽しめる露天風呂です。河原の湯から少し歩くと、「日本の滝百選」にも選ばれた雄大な惣滝を望むことができる展望ポイントがあります。

秘境に湧く野湯「滝の湯」

燕温泉の登山口から登山道をたどり、約1時間20分（下りは約1時間）の道のりを進むと、称明滝と光明滝という二つの滝が現れます。この滝壺のすぐ近くに、野趣あふれる「滝の湯」が整備されています。こちらは燕温泉組合によって管理されており、文字通りの「野湯」として、大自然の中で湧き出る温泉を体感できる貴重な場所です。秘湯探訪の旅番組でも紹介されたことがあり、到達するには相応の体力と準備が必要ですが、その苦労に見合うだけの特別な体験が待っています。

開湯の歴史

燕温泉には、弘法大師によって発見されたという開湯伝説が伝わっています。温泉地としての開発計画が立てられたのは明治8年のことですが、実際に温泉街として本格的に開かれたのは明治28年になってからです。そして昭和47年7月29日には、近隣の関温泉と共に環境庁（現在の環境省）により国民保養温泉地に指定され、その優れた温泉資源と療養環境が国に認められました。

アクセス

燕温泉へのアクセスは、主に以下の方法があります。

公共交通: えちごトキめき鉄道妙高はねうまラインの関山駅から、妙高市営バス（ぶらっと妙高山麓周遊バス）の「E 関・燕温泉線」に乗車し、約30分で到着します。夏季には、赤倉温泉スキー場周辺など近隣の観光地を結ぶ「D 妙高山麓線」も運行され、周辺エリアからのアクセスも便利になります。
自動車: 上信越自動車道の妙高高原ICまたは中郷ICから、それぞれ約14kmの道のりです。山道となるため、積雪期などは特に注意が必要です。

静かな山里で、個性豊かな湯と大自然を満喫できる燕温泉。秘湯気分を味わいたい方や、登山と温泉を両方楽しみたい方におすすめの温泉地です。

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