牛邯

牛邯（ぎゅう かん）

牛邯（生没年不詳）は、中国の新代末から後漢時代初期にかけての武将で、字は孺卿（じゅくけい）と称しました。彼は涼州隴西郡狄道県（現在の甘粛省一帯）の出身です。

生涯

牛邯は、新末後漢初の混乱期に隴右地方で勢力を拡大した隗囂（かいぎょう）の配下として活躍しました。彼は勇敢で、武術に優れていただけでなく、知略にも長けていたと伝えられています。かつては自身も辺境で独自の勢力を築いていた時期があったようです。

建武6年（30年）、後漢の光武帝（こうぶてい）の使者として来歙（らいきゅう）が隗囂のもとを訪れ、蜀（しょく、公孫述が建てた国）討伐への協力を要請しました。しかし、隗囂はこの要請を拒否。その際、来歙が自分を暗殺しようとしたと疑い、激怒した隗囂は牛邯に命じて来歙を包囲させようとしました。しかし、腹心である王遵（おうじゅん）の諫言により、牛邯の派兵は中止されました。

建武8年（32年）春、隗囂と光武帝との間で本格的な戦いが始まりました。後漢の将軍である来歙が略陽（りゃくよう、天水郡）を急襲し、これを陥落させると、牛邯は隗囂の命令で瓦亭（がてい、安定郡烏枝県）を守備し、他の漢軍の進攻に備えました。一方、隗囂自身は略陽を包囲攻撃しましたが、同年秋になっても奪還できず、光武帝自らが率いる軍勢に敗北を喫しました。

同年、かつての同僚であり、旧友でもあった王遵が、牛邯に手紙を送り、後漢に帰順するよう説得しました。牛邯は手紙を受け取ってから十数日間悩みましたが、ついに後漢への投降を決意し、部下たちに別れを告げて洛陽へと向かいました。光武帝は牛邯を太中大夫（たいちゅうたいふ）に取り立てました。牛邯の投降をきっかけに、隗囂に所属していた13人の大将、16県、そして10数万の兵士が続々と後漢に降伏し、隗囂軍は大幅に勢力を弱めることとなりました。

建武9年（33年）、関都尉（かんと・い）が廃止され、護羌校尉（ごきょうこうい）が復活しました。この時、大司徒司直（だいしとしちょく）の杜林（とりん）と太中大夫の馬援（ばえん）が、牛邯を護羌校尉に推薦し、光武帝もこれを認め、符節（ふせつ）を与えて任命しました。牛邯は令居（れいきょ、隴西郡）に駐屯し、来歙と共に、隗囂の遺児である隗純（かいじゅん）の軍を平定しました。なお、護羌校尉の地位は、牛邯の死後、一旦廃止されたと伝えられています。

人物評価

牛邯は、その勇敢さと才覚によって、新末後漢初の動乱期に頭角を現しました。彼は、当初こそ隗囂に仕えましたが、最終的には光武帝に帰順し、その才能を認められて重用されました。彼の投降は、隗囂軍の崩壊を加速させ、後漢による中国統一に大きく貢献したと言えるでしょう。

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