狂歌本

狂歌本とは、主に江戸時代に出版された狂歌を集めた書籍を指します。

概要

当初の狂歌本には挿絵はありませんでしたが、江戸時代に入ると浮世絵師などによって挿絵が描かれるようになり、挿絵入りの狂歌本は「絵入狂歌本」と呼ばれました。初期の例としては、天和元年（1681年）に刊行された『卜養狂歌集』に菱川師宣の挿絵が見られます。

天明期には狂歌が黄金時代を迎え、喜多川歌麿が作画した天明8年（1788年）刊行の『虫えらみ』、寛政元年（1789年）刊行の『潮干のつと』などは、豪華な色摺り本の代表的な作品です。歌麿の他にも、勝川春章、勝川春好、鳥居清長、北尾政演、歌川豊国、鳥文斎栄之、葛飾北斎など、多くの浮世絵師が狂歌本の挿絵を手がけました。これらの狂歌本は、個々の絵師の作画期や交友関係を知る上で重要な資料となっています。

これらの狂歌本は、地本問屋と呼ばれる版元から出版されました。

幕末には、歌川広重が作画した嘉永元年（1848年）刊行の『東海道名所図会』、安政3年（1856年）刊行の『江都名所図会』など、風景画を使用した絵入狂歌本が著名です。

これらの狂歌本は、当時の文化や風俗を知る上で貴重な資料であるとともに、浮世絵の歴史を研究する上でも重要な役割を果たしています。

参考資料

吉田漱 『浮世絵の基礎知識』 雄山閣、1987年 ※33頁
小林忠 大久保純一 『浮世絵の鑑賞基礎知識』 至文堂、1994年 ※154頁

関連書籍

『歌麿『画本虫撰』『百千鳥狂歌合』『潮干のつと』』（著：喜多川　歌麿　編：菊池　庸介）講談社、2018.06.05

外部リンク

狂歌最旦黄表紙五種　浜田義一郎　大妻女子大学文学部紀要3巻　1971-03

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