獅子と太陽

獅子と太陽：イランの伝統的な紋章

「獅子と太陽」（ペルシア語: شیر و خورشید）は、剣を前足に持った獅子と太陽を組み合わせたイランの伝統的な紋章です。この紋章は、ペルシャ王の象徴として長らく用いられ、1576年から1979年までイランの国旗にも採用されていました。

起源と歴史

獅子と太陽の起源は、メソポタミア文明のバビロニアの占星術におけるしし座のシンボルに遡るとされています。シリアでは、ライオンは太陽の象徴として認識されており、古代エジプトのデンデラ神殿には、「アヒ大王は太陽の獅子、北の空に昇る獅子、太陽を担う輝かしい神」と記されています。これらのことから、中東地域では古くからライオンと太陽が結び付けられていたと考えられます。

13世紀になると、獅子と太陽のシンボルが初めて登場します。ルーム・セルジューク朝のタマル・グルジュ・ハトゥンを表した1240年の貨幣には、この紋章が描かれています。その後、サファヴィー朝時代にイランの国旗に取り入れられ、イランのシンボルとしての地位を確立しました。この紋章は、社会、国家、宗教の二つの柱を象徴し、特にイスラム教シーア派との結びつきが強かったとされています。

アフシャール朝のシャー、ナーディル・シャーの紋章や旗にも、獅子と太陽のモチーフが用いられています。ガージャール朝になると、ライオンはシャムシール（曲がった刀剣）を持つようになり、その上には王家を示す王冠が加えられました。1808年には、ガージャール朝のファトフ・アリー・シャーによって、ペルシアに功績を残した外国人を称えるための獅子と太陽の勲章が制定されました。

1906年の憲法修正第5条では、国旗のライオンと太陽のモチーフが明確化され、前足にサーベルを持ち、太陽を背景にしたライオンの姿が定められました。この際、太陽の顔は削除されています。

1929年には、モジタバ・ミヌヴィが獅子と太陽の紋章がテュルク系に由来すると主張し、国章を伝説的なペルシャ王室旗であるデラフシュ・カヴィアーニに変更することを提唱しました。しかし、彼の提案は採用されませんでした。

イラン革命後の変化

1979年のイラン革命により、獅子と太陽は王家の象徴として公共の場から撤去されました。1980年には、アッラーフを意匠化し、勇敢さの象徴であるチューリップをイメージした新たな国章と国旗が制定されました。さらに、赤十字社の十字に代わって、1922年に設立された獅子と太陽をあしらった赤獅子太陽社も、赤新月社に置き換えられました。

現在、獅子と太陽の紋章は、イランの君主主義者など一部のコミュニティで、イスラム共和制への反対の象徴として使用されています。

ギャラリー

この紋章は、イランの様々な場所で見られ、その歴史的な重要性を示しています。イラン国内の様々な場所や、イラン国外でも、過去に使われた例や、現在でも紋章を使っている例が確認できます。

イランでの用途

イラン以外での用途

脚注

参考文献

関連項目

イランの国旗
イランの国章
* インドライオン

この紋章は、イランの歴史と文化を象徴する重要な要素であり、その起源から現代まで、さまざまな変遷を経てきました。現在でも、その象徴性は多くの人々に影響を与え続けています。

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