率川神社

率川神社の概要

率川神社（いさがわじんじゃ）は、奈良県奈良市本子守町に所在する神社で、正式には率川坐大神御子神社と称されます。また、子守明神としても知られています。『延喜式神名帳』には「率川坐大神神御子神社 三座」と記録されており、式内小社としての地位を有しています。

歴史

この神社は推古天皇元年（593年）2月3日に、大三輪君白堤が神武天皇の皇后である媛蹈韛五十鈴姫命を祭神として奉斎したことから始まります。奈良市の中でも最も古い神社とされています。後に、元正天皇によって本殿の右には媛蹈韛五十鈴姫命の父神である狭井大神、左には母神の玉櫛姫命が祀られることとなりました。

仁寿2年（852年）には、文徳天皇のもとで従五位下を賜り、神封6戸が与えられました。治承4年（1180年）の南都焼討では社殿が焼失しましたが、建久元年（1190年）に興福寺の支援を受けて再建され、以降は興福寺によって支配されました。中世以降には春日若宮神官によって管理され、「春日三枝神社」という名称でも知られるようになります。また、遷宮記録は『大乗院寺社雑事記』にしばしば見受けられます。

近世には春日大社の大宮外院の一社として存在していたが、明治10年（1877年）に内務省の命により大神神社摂社率川坐大神御子神社としての位置付けが確定しました。現在、本殿中央には御子神である媛蹈韛五十鈴姫命が祀られ、両脇には父母神が鎮座しており、これにより古くから安産や育児の神として厚い信仰が寄せられています。また、神社の北側を流れる率川は、子守川という俗称でも知られています。

祭神

• - 中本殿: 媛蹈韛五十鈴姫命
• - 右本殿: 狭井大神
• - 左本殿: 玉櫛姫命

境内の構成

本殿は三棟の一間社春日造の社殿が並び、障屏によって繋がれています。正面には七級の木階が設けられ、登高欄には擬宝珠が取り付けられており、屋根は桧皮葺となっています。細部手法から江戸時代初期の建築であると考えられています。

本殿の他にも、率川阿波神社や住吉社、春日社、蛙石、社務所などが境内に存在します。住吉社では上筒男命、春日社では武甕槌命などの神が祭られています。

三枝祭

毎年6月17日に行われる例祭「三枝祭」は一般にゆり祭りと呼ばれ、古くはさいぐさとも称される笹ゆりが供えられます。この祭りでは、ゆりの茎を囲んだ酒樽や、折櫃に納めた食物が供えられ、悪疫除けの祈願が込められています。

祭り当日には、祭神である五十鈴姫の神事に基づいて、ゆりを持った乙女たちの行列が町を巡る様子が見られます。三枝祭は『神祇令』に由来を持つ古い祭りです。

率川阿波神社

率川神社には末社として率川阿波神社もあり、宝亀2年（771年）に大納言是公によって建立されたと伝えられています。この神社の祭神は事代主命であり、一般には恵比須神として親しまれています。初戎は毎年1月5日に行われます。

神社は歴史を通じて、天文元年（1532年）の土一揆や松永久秀の戦火に遭い、長い間廃れていましたが、明治時代に小祠が祀られるようになり、1920年には現在の率川神社に社殿が遷されました。現在では整備も進み、社殿の前には旧跡を記した石灯籠が設置されています。

この神社に関する記録は多く、三島由紀夫の小説『奔馬』でもその祭事の美しさが述べられています。

アクセス

奈良交通バスを利用する場合、市内循環本子守町バス停からすぐの位置にあります。近鉄奈良駅からは南へ向かって徒歩約5分、JR奈良駅からは東口を出て8分ほどで到達できます。

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