玉壁の戦い

玉壁の戦い：知略と堅守が織りなす攻防戦

玉壁の戦いは、中国南北朝時代の546年、現在の山西省運城市稷山県にあたる玉壁を舞台に、東魏軍と西魏軍が激突した攻城戦です。東魏の丞相、高歓が西魏の韋孝寛が守る玉壁を攻略しようとしましたが、韋孝寛の卓越した防備戦術によって、東魏軍は大きな損害を出し、撤退を余儀なくされました。

戦いの経緯

546年10月、高歓率いる東魏軍は玉壁への攻撃を開始。昼夜を問わず城を攻め続けましたが、韋孝寛の守りは堅く、なかなか突破口を開けませんでした。城中からは鉄面をつけた兵士が現れ、東魏軍を苦しめました。高歓は、元溢に命じてこの兵士を射させ、現れるたびに目を射抜かせたとされています。

高歓は、李業興の孤虚術を用いて兵を城の北側に集めましたが、北側は地形的に険しく、攻撃は困難でした。そこで高歓は、城の南側に土山を築き、そこから城内に進入しようと試みました。しかし、韋孝寛は城壁の上に二つの楼閣を建て、木を縛ってそれらを繋ぎ、土山よりも高くすることで東魏軍の侵入を防ぎました。

高歓はさらに、地中に十本の穴を掘って地下道を作りました。これに対し、韋孝寛は長い塹壕を掘り、地下道への対策を講じました。塹壕の上には選抜された兵士を待機させ、地下道が塹壕に到達すると、東魏兵を捕らえて殺害しました。また、塹壕の外には柴を積んでおき、東魏兵が地下道を通ってくると、火をつけて投げ込み、焼き殺しました。

東魏軍は攻城車を使って城壁を破壊し、兵士を侵入させようとしましたが、韋孝寛は布を縫い合わせて長い幕を作り、攻城車のところに向けて張り出すことで、その動きを封じました。また、松と麻を束ねて竿を作り、油を染み込ませて火をつけ、楼閣を焼こうとしましたが、韋孝寛は長鉤を使って火竿を割り、松と麻を落としました。

東魏軍は城の四面に二十本の地下道を掘り、地中の梁柱を火で焼いて城壁を崩そうとしました。しかし、韋孝寛は崩れた箇所を木柵で覆って防御し、東魏軍の侵入を許しませんでした。

城外からの攻撃が尽きた頃、韋孝寛は東魏軍が拠点としていた土山を奪い取りました。高歓は祖珽を派遣して韋孝寛を説得しようとしましたが、韋孝寛は相手にしませんでした。高歓は城主を斬って降伏する者に高位を与えるという内容の矢文を城中に射込ませましたが、韋孝寛は自らその矢文の文面を背にして城外に射返し、「高歓を斬ることのできた者はこれに準じる」と叫びました。

終結

50日間に及ぶ攻城戦の末、東魏軍は城を陥落させることができず、戦死および病死する兵士は7万人に達しました。11月、高歓は玉壁の包囲を解いて撤退しました。

西魏は、この防戦の功労者である韋孝寛に、驃騎大将軍・開府儀同三司の位を与え、爵位を建忠公に進めました。

玉壁の戦いは、韋孝寛の知略と堅守が光る戦いとして、歴史に名を刻んでいます。

参考文献

『資治通鑑』（中華書局，1956年）巻159 梁紀15
『北斉書』（中華書局，1972年）
『周書』（中華書局，1971年）
『北史』（中華書局，1974年）

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