チャムド市

チャムド市（チャムドし）

チャムド市は、中華人民共和国チベット自治区に位置する地級市であり、自治区の東部、カム地方の西部に広がっています。チベット語では「チャムド・サクル」と呼ばれ、「チャプ（水）」と「ド（合流地点）」を意味します。日本では「チャムド」のほか、漢字表記からの重訳である「チャンドゥ」とも呼ばれることがあります。

地理

チャムド市は、チベット自治区の東部、メコン川とサルウィン川の上流地帯に位置しています。南はミャンマーと国境を接し、南東は雲南省デチェン・チベット族自治州、東は四川省カンゼ・チベット族自治州、北は青海省玉樹チベット族自治州と隣接しています。この地域は、チベットの伝統的な地方区分であるカム地方の一部を構成しています。

歴史

チャムド市を含む地域は、唐代には女性を崇拝し女王をいただく東女国が存在しました。その後、吐蕃（チベット）に統合されました。吐蕃崩壊後、この地に割拠した小国の主たちは、それぞれ中国王朝と交流を持ちました。13世紀にはモンゴル帝国がチベット全域を支配し、サキャ派の長が地方官として任命されました。明代には、チベット各地の諸侯に軍事指揮官の称号が与えられ、この地域は「朶甘思衛」に属し、チベット仏教サキャ派の支派ゴル派が勢力を拡大しました。

16世紀には麗江を本拠とするジャン王の勢力が拡大しましたが、17世紀にはグシ・ハン王朝の支配下に入りました。18世紀には、雍正帝によるチベット分割によってダライラマに賞与され、「西蔵」の一部として位置づけられました。

1905年、四川総督趙爾豊は軍を率いてチベットに侵攻し、1911年にはラサに入城しました。趙はチベットを中国に併合しようと計画しましたが、辛亥革命により殺害され、その計画は頓挫しました。その後、この地域は中国政府によって川辺特別区に組み込まれましたが、チベットの統合と独立を目指すガンデンポタンとの間で衝突が繰り返されました。1950年には、人民解放軍が進駐し、チベット軍との間で戦闘（チャムドの戦い）が発生しました。

行政区画

チャムド市は、1つの市轄区と10の県を管轄しています。

カルプ区（卡若区）：市人民政府所在地。
ジョムダ県（江達県）
ゴンジョ県（貢覚県）
リウォチェ県（類烏斉県）
テンチェン県（丁青県）
ダクヤプ県（察雅県）
パシュー県（八宿県）
ゾガン県（左貢県）
マルカム県（芒康県）
ロロン県（洛隆県）
ペンバル県（辺壩県）

年表

1950年10月23日： 西康省チャムド地区が成立。
1951年1月1日： 西康省の分割により、チベット地方チャムド地区となる。
1955年3月9日： チャムド地区がチャムド弁事処に改称。
1959年4月： チャムド県、ジョムダ県、テンチェン県が発足。
1959年4月30日： ゾガン・ゾンが県制施行し、ゾガン県となる。
1959年5月： パシュー・ゾンが県制施行し、パシュー県となる。
1959年7月： ダクヤプ県、寧静県、ツァカロ県、ラリ県が発足。
1959年7月5日： バチェン・ゾンが県制施行し、バチェン県となる。
1959年9月： ビル・ゾンが県制施行し、ビル県となる。
1959年10月1日： ゴンジョゾンとサゲンゾンが合併し、ゴンジョ県が発足。
1959年11月30日： ロロンゾンとショバントゾンが合併し、ロロン県が発足。
1959年12月： ストゾン、イオンゾン、チョムドゾンが合併し、ポメ県が発足。
1960年1月7日： チャムド県、ジョムダ県、ゴンジョ県、寧静県、ロロン県、テンチェン県、ダクヤプ県、パシュー県、ゾガン県、ツァカロ県、ペンバルゾン、サデンゾン、サンチュゾン、リウォチェゾンがチャムド専区に編入。
1960年1月： ペンバルゾンとサデンゾンが合併し、ペンバル県が発足。
1960年4月： 寧静県とツァカロ県が合併し、寧静県が発足。サンチュ・ゾンが県制施行し、サンチュ(桑昂曲)県となる。
1964年7月27日： ニンティ専区ポメ県を編入。
1965年8月23日： チベット自治区の成立により、チベット自治区チャムド専区となる。
1965年11月3日： 寧静県がマルカム県に改称。
1966年2月1日： サンチュ県がザユル県に改称。
1970年11月20日： チャムド専区がチャムド地区に改称。
1983年10月8日： ポメ県、ザユル県がニンティ地区に編入。マルカム県の一部が分立し、ツァカロ(塩井)県が発足。ゾガン県の一部がニンティ地区ザユル県の一部と合併し、ピュトク(碧土)県が発足。チャムド県、ダクヤプ県、ジョムダ県の各一部が合併し、トバ(妥壩)県が発足。チャムド県、ジョムダ県の各一部が合併し、シンダ(生達)県が発足。パシュー県の一部がニンティ地区ポメ県に編入。
1999年9月21日： ツァカロ県がマルカム県に編入。ピュトク県がゾガン県、ニンティ地区ザユル県に分割編入。トバ県がチャムド県、ダクヤプ県、ジョムダ県に分割編入。シンダ県がチャムド県、ジョムダ県に分割編入。
2014年10月20日： チャムド地区が地級市のチャムド市に昇格。

交通

航空: チャムド・バンダ空港
道路:
G214国道
G317国道
G318国道

参考文献

A. Gruschke: The Cultural Monuments of Tibet’s Outer Provinces: Kham - Volume 1. The Xizang Part of Kham (TAR), White Lotus Press, Bangkok 2004. ISBN 974-480-049-6
Tsering Shakya: The Dragon in the Land of Snows. A History of Modern Tibet Since 1947, London 1999, ISBN 0-14-019615-3

外部リンク

チベット地域情報昌都 （中国語）

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