王允成

王允成（おう いんせい）

王允成は、明代に活躍した官僚です。生没年ははっきりしていませんが、字を述文といい、本貫は沢州でした。彼の生涯は、地方官から中央官僚へと駆け上がり、権力闘争に巻き込まれながらも、自身の信念を貫いた波乱に満ちたものでした。

初期の官僚生活

万暦年間に郷試に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。最初に任じられたのは獲鹿知県という地方官でしたが、そこで優れた治績を挙げ、その手腕を認められて南京御史に抜擢されました。当時、進士出身の官僚たちが権勢を誇り、挙人出身の官僚を見下す風潮がありました。王允成は体格が恵まれ、才気に溢れており、進士たちを凌駕するほどの存在感を示していました。遼東での失敗を犯した官僚たちを批判し、刑罰を正すよう求める上奏を行ったことからも、その大胆な性格がうかがえます。

権力闘争への関与

泰昌元年（1620年）、天啓帝が即位すると、朝廷内では梃撃の案や移宮の案を巡る激しい論争が繰り広げられました。天啓帝は二度の勅諭を下し、李選侍を追放し、移宮の案を確定しようとしましたが、大学士の方従哲が上諭を差し戻すという事態が発生しました。王允成は、この方従哲の行為を司馬昭になぞらえて非難し、保治十事を上奏しました。また、姚宗文が遼東を巡閲調査し、熊廷弼を排除しようとした際には、姚宗文の責任を追及し、両者を同列に処分することに反対しました。このように、王允成は、権力闘争に臆することなく、自分の意見を積極的に主張しました。

晩年と名誉回復

天啓元年（1621年）には、万暦朝の直臣であった楊天民らの名誉回復を求める上疏を行い、天啓帝に聞き入れられました。その後も、人事や軍政、賞罰について上奏を重ね、内閣と司礼の責任で宦官や側近の権勢を抑え、天啓帝と皇弟を支えるよう訴えました。しかし、刑部尚書の黄克纘を弾劾したことが天啓帝の怒りを買い、俸給を停止される処分を受けました。その後も、給事中の毛士龍が順天府丞の邵輔忠を弾劾した際には、王允成も同僚の李希孔らと共に邵輔忠の排斥に加担しました。

当時、宦官の劉朝・魏進忠と天啓帝の乳母である客氏が互いに結託して権勢を振るっていました。王允成は、彼らの罪を列挙する上疏を行いましたが、天啓帝はこれを聞き入れませんでした。天啓3年（1623年）には再び魏進忠を弾劾しましたが、状況は変わりませんでした。天啓4年（1624年）には、趙南星が吏部尚書に就任したことで、王允成は北京御史に転任しましたが、趙南星が追放されると、御史の張訥によって趙南星が王允成を不正に任用したとして弾劾され、官爵を剥奪されました。さらに、給事中の陳維新によって、不正に財産を蓄えた罪に問われました。しかし、崇禎帝が即位すると、かつて皇弟の保護を請願したことが評価され、北京御史として復職し、その生涯を終えました。


王允成は、その生涯を通じて、権力に屈することなく、自らの正義を貫いた官僚でした。その行動は時に大胆で、多くの敵を作りながらも、その信念を曲げることはありませんでした。彼の生涯は、明代末期の政治状況と官僚たちの複雑な人間関係を映し出す鏡と言えるでしょう。

参考資料

* 『明史』巻246 列伝第134

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