王文幹

王文幹（おう ぶんかん）

王文幹は、モンゴル帝国に仕えた漢人将軍です。大名府南楽県の出身で、生没年は不詳です。

概要

王文幹は騎射に優れた武将であり、父である王珍の死後、その地位である行軍万戸を継承しました。

1258年、モンケ・カアンによる南宋親征が開始されると、王文幹はクビライ率いる軍団に属し、東平路行軍万戸の厳忠済、保定軍民万戸の張柔、真定万戸の史権、曲陽行軍万戸の邸浹、山東行尚書省兵馬都元帥の張宏、水軍万戸の解誠、同じく水軍万戸の張栄実らと共に従軍しました。

1259年、モンケ・カアンが急逝すると、クビライは友軍を救うために南下し、鄂州を包囲しました。この戦いにおいて、王文幹は矢を受けながらも率先して城壁をよじ登るという勇敢さを見せました。この功績により、良馬と金品が褒美として与えられました。

1262年、李璮の乱が発生すると、王文幹は哈必赤率いる討伐軍に加わりました。乱の鎮圧後、哈必赤は王文幹の功績を称え、官位を授けようとしましたが、王文幹は「官位が上がっても、それは私一人の栄誉にしかなりません。しかし、金銭を賜れば、その恩恵は部下たちに及ぶでしょう」と述べ、官位ではなく物品を望みました。その結果、白金二千両、器皿百事、雑多な ткани数百縑が下賜されると、彼はそれを全て軍中に分け与えたと言われています。

同年、李璮の乱を教訓として、クビライは漢人世侯の解体を決定し、その一環として父子兄弟が同じ職に就くことを禁じました。王文幹の弟である王文礼は、このために千戸の職を失う危機に瀕しましたが、王文幹は自らの地位を辞することを申し出て、弟の留任を願い出ました。その結果、王文幹は武官としての地位を失うことになりました。

その後、王文幹は文官に転身し、同知大名路総管府事、河東山西道提刑按察副使などを歴任しました。また、かつての鄂州での功績が認められ、僉東川行枢密院事に昇格しました。さらに、全州、衛輝、東平の総管、江東建康道提刑按察使を歴任しましたが、在職中に58歳で亡くなりました。

王文幹は質素な生活を心がけていたため、亡くなった時にはわずか7緡の銭しか残されていませんでした。人々は彼の清貧さを改めて称賛したと言われています。

参考文献

池内功「フビライ政權の成立とフビライ摩下の漢軍」『東洋史研究』第43巻第2号、東洋史研究會、1984年9月、239-274頁
『元史』巻152列伝39王珍伝
『新元史』巻143列伝40王珍伝
『蒙兀児史記』巻53列伝35王珍伝

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