王浚

王浚（おう しゅん）：西晋末期の動乱を駆け抜けた将軍・政治家

王浚（おう しゅん、252年 - 314年）は、西晋末期から五[[胡十六国時代]]にかけて活躍した人物です。字は彭祖。父は西晋の重臣・王沈で、恵帝の皇后・賈南風の時代から台頭し、幽州を拠点に独自の勢力を築き上げました。

生涯

若き日の苦難と台頭

王浚は名門の家に生まれましたが、母の身分が低かったため、当初は認知されませんでした。父の死後、後継者として認められ、博陵公の爵位を継承。その後、地方官や中央の役職を歴任し、着実にキャリアを積み重ねていきました。

幽州での地盤確立

300年、王浚は寧北将軍・青州刺史に任じられ、後に幽州に出鎮します。当時、北方の異民族との関係が悪化しており、王浚は鮮卑族との婚姻政策を通じて関係改善を図りました。娘を段部や宇文部に嫁がせ、彼らの協力を得ることで、幽州における自身の地位を強固なものとしました。

司馬一族の内紛と王浚の台頭

西晋王朝は、司馬一族による内紛が絶えませんでした。王浚は当初、中立の立場を保っていましたが、司馬穎の横暴に憤り、討伐を決意。鮮卑族の兵力を借りて司馬穎を破り、恵帝を奪還する功績を挙げました。この功績により、王浚は都督東夷河北諸軍事・驃騎大将軍・幽州刺史に任じられ、燕国を封国として与えられました。

石勒との攻防

王浚は、勢力を拡大する前趙の石勒と激しく争いました。石勒の侵攻をたびたび撃退しましたが、次第に劣勢に立たされるようになります。王浚は、段部や拓跋部といった異民族勢力との連携を模索しましたが、いずれも失敗。孤立を深めていきました。

帝位への野望と最期

313年、懐帝が処刑されると、王浚は次第に帝位を狙うようになります。側近の反対を押し切り、独断で皇太子を擁立。百官を任命し、司馬睿（後の東晋の元帝）にも官位を授与しました。石勒は王浚の油断を誘うため、天子に推戴するという偽りの上表文を送りました。王浚はこれを信じ込み、石勒への警戒を怠るようになります。

314年、石勒は幽州を急襲。王浚は捕らえられ、襄国へ連行された後、処刑されました。最後まで石勒を罵り続け、その誇り高い姿勢を崩すことはありませんでした。

人物・逸話

王浚の政治は苛酷であり、その将軍や官吏にも貪欲で残虐な者が多かったと言われています。
帝位を目論むようになってからは、驕り高ぶって政務を顧みなくなり、人望を失っていきました。
石勒に捕らえられた際、水に身を投げて自殺を図りましたが、未遂に終わっています。
北部の州では「府庫の中は朱丘伯（朱碩の字）により盛んとなり、そのうち半分の嚢（財物を入れる袋）が棗郎（王浚の娘婿である棗嵩）の懐に入る」という童謡が流行しました。

王浚は、西晋末期の動乱期において、独自の勢力を築き上げた傑物でした。しかし、帝位への野望に囚われ、人望を失ったことが、彼の没落を招いたと言えるでしょう。

参考文献

『晋書』列伝第39 王沈伝 付王浚伝
『資治通鑑』巻82 - 巻89

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