石勒

石勒（せきろく）：後趙の創建者、波乱の生涯

石勒（せき ろく、274年 - 333年）は、五胡十六国時代の後趙を建国した人物です。その生涯は、奴隷から皇帝へと成り上がった波乱に満ちたものでした。

生い立ちと奴隷時代

石勒は、もともと羯族の出身で、姓を持たず「㔨」と名乗っていました。幼い頃は困窮し、西晋の皇族に売られて奴隷として過ごすという辛酸をなめました。しかし、並外れた体格と胆力を持っていた彼は、次第に頭角を現していきます。

反乱への参加と頭角の表出

奴隷から解放された後、石勒は群盗となり勢力を拡大。西晋の混乱に乗じて反乱に加わり、匈奴の漢（後の前趙）の部将として台頭します。この頃、汲桑という人物から石姓を授けられ、名を勒と改めました。

後趙の建国と華北の征服

319年、石勒は漢の皇帝である劉曜と対立し、自立して後趙を建国します。そして、卓越した軍事力と戦略によって華北の大部分を征服し、強大な国家を築き上げました。329年には劉曜を捕らえて前趙を滅ぼし、その勢力をさらに拡大しています。

内政と文化への貢献

石勒は、単なる征服者ではありませんでした。彼は、法律の整備、度量衡の統一、戸籍の作成、農業の奨励など、内政にも力を入れ、混乱していた華北の秩序を回復させました。また、仏教を厚く保護し、西域の僧侶である仏図澄を重用することで、仏教の伝播に貢献しました。

人物像と逸話

石勒は、字を読むことができませんでしたが、人に書物を読ませて聞くことを好み、様々な評論を行ったといわれています。また、過去の英雄たちについて独自の評価を下すなど、その人物像は非常に魅力的です。

石勒十八騎

石勒が群盗時代から付き従ってきた18人の部下は「石勒十八騎」と呼ばれ、彼の覇業を支える重要な存在でした。彼らは、後趙の華北制覇に大きく貢献しました。

死後の後趙

333年、石勒は崩御し、子の石弘が後を継ぎますが、石勒の従子である石虎によって簒奪されます。

石勒は、奴隷から皇帝にまで上り詰めた、稀代の英雄でした。彼の築いた後趙は、短命に終わりましたが、その事績は、五胡十六国時代の歴史に大きな足跡を残しました。

参考文献

三崎良章『五胡十六国 中国史上の民族大移動』東方書店、2002年2月。
小野響『後趙史の研究』汲古書院、2020年12月。ISBN 978-4-7629-6061-1。
『晋書』巻104、105「石勒載記上下」
『魏書』「列伝第八十三 - 羯胡石勒」巻95
『資治通鑑』「晋紀」巻86 - 巻95
『十六国春秋』「後趙録」

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