王英 (明)

王英（おう えい）は、明代に活躍した官僚で、字は時彦、号は泉坡と称しました。洪武9年（1376年）に撫州金渓県で生まれ、景泰元年（1450年）に75歳でその生涯を閉じました。彼は王脩本と曽氏の間に生まれた子で、その才能は早くから注目されていました。

永楽2年（1404年）、王英は進士に及第し、その後のキャリアを大きく飛躍させます。翰林院庶吉士に選ばれると、文淵閣での読書を通じて学識を深めました。永楽帝は彼の慎重かつ注意深い性格を高く評価し、王直と共に機密文書の書記という重要な任務を任せました。さらに、『太祖実録』の編纂にも参加し、その才能を発揮しました。永楽5年（1407年）には翰林院修撰に、永楽14年（1416年）には翰林院侍講へと昇進を重ね、着実にキャリアを積み上げていきました。

永楽20年（1422年）、王英は永楽帝の漠北遠征に随行しました。帰還の際、一行は李陵城を通過しましたが、永楽帝は城内に石碑があるという情報を聞きつけ、王英に調査を命じました。王英が現地に赴くと、石碑は見つからず、代わりに土中から石が露出しているのを発見しました。掘り起こしてみると、それは元の時代の李陵台駅令である謝某の徳政碑であることが判明しました。碑陰にはダルガチらの氏名が刻まれており、この事実を王英が上奏すると、永楽帝は後日の争いの種となることを懸念しました。そのため、王英は再び李陵城へ派遣され、石碑を粉砕して川に沈めるという任務を遂行しました。この一件からも、王英の忠実さと実行力が窺えます。

永楽帝の崩御後、洪熙帝が即位すると、王英は右春坊大学士に累進し、故郷への帰省を願い出ました。しかし、洪熙帝が短期間で崩御し、宣徳帝が即位すると、王英は朝廷に復帰しました。彼は『太宗実録』と『仁宗実録』の編纂に携わるなど、その学識を活かして重要な役割を果たしました。宣徳5年（1430年）には少詹事に転じ、麒麟帯を賜るなど、皇帝からの信頼は厚かったです。宣徳7年（1432年）に母が亡くなった際には、特別な葬祭を賜り、宦官の護衛付きで帰郷を許されましたが、ほどなくして官に復帰しました。

正統元年（1436年）には、英宗に経書を講義する席に近侍するよう命じられ、その博識ぶりを高く評価されました。『宣宗実録』の編纂では総裁を務め、礼部侍郎に進むなど、そのキャリアは頂点を迎えました。正統8年（1443年）には礼部の事務を管理するよう命じられ、浙江で疫病が流行した際には、南鎮へ派遣されて祭祀を執り行いました。その際、長らく日照りが続いていたにもかかわらず、王英が到着すると大雨が降ったことから、民衆からは「侍郎雨」と称えられました。

正統10年（1445年）に再び帰休を願い出ますが、許されることはありませんでした。正統12年（1447年）、王英の子である按察副使の王裕が事件に連座して獄に下された際には、王英は上疏して自らの処罰を求めましたが、不問に付されました。正統13年（1448年）には、南京礼部尚書に進み、その官職を全うしました。

景泰元年5月17日（1450年6月26日）、王英は75歳でこの世を去りました。その功績を称え、諡として「文安」が贈られました。彼の著作には『泉坡文集』6巻と『泉坡詩集』5巻があり、後世にその足跡を伝えています。王英は、明代の歴史において、その学識と誠実な人柄で名を残した人物として、今も語り継がれています。

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