珪灰石

珪灰石：スカルン鉱物としての性質と特徴

珪灰石（けいかいせき、Wollastonite、ウラストナイト）は、ケイ酸塩鉱物に分類される鉱物の一種です。輝石に似た構造を持つ準輝石類に属し、化学組成式はCaSiO3で表されます。カルシウム（Ca）の一部が鉄（Fe2+）で置換されている場合もあります。結晶構造は通常三斜晶系ですが、単斜晶系のパラ珪灰石も存在し、両者の区別は容易ではありません。

産出と生成

珪灰石は、スカルン帯で最も一般的に産出する鉱物として知られています。スカルンとは、石灰岩などの炭酸塩岩にマグマが貫入した際に、接触変成作用によって形成される鉱物集合体のことで、珪灰石はその代表的な構成鉱物です。具体的には、石灰岩中の炭酸カルシウム（CaCO3）とマグマ中に含まれるケイ酸が反応することで生成されます。

主要な産出地として、アメリカ、カナダ、メキシコ、ノルウェー、フィンランド、イタリアなどが挙げられます。日本では、岐阜県春日鉱山が、産業用に大量の珪灰石を産出したことで有名です。

物理的性質と識別

珪灰石は、共生鉱物である方解石（石灰岩や結晶質石灰岩を構成）や石英（チャートや珪岩を構成）と見た目や性質が似ているため、注意が必要です。しかし、モース硬度を用いることで区別が可能です。方解石の硬度は3、石英の硬度は7であるのに対し、珪灰石の硬度は4.5～5と、この違いを利用して識別できます。

珪灰石グループ

珪灰石は、いくつかの類似の鉱物を含む「珪灰石グループ」に属します。このグループには、珪灰石以外にも様々な化学組成を持つ鉱物が含まれています。主な構成元素の違いによって、多様な鉱物種が形成されます。グループに含まれる主な鉱物としては、以下のものがあります。

バスタム石 (bustamite): CaMn2+(Si2O6)
鉄バスタム石 (ferrobustamite): Ca(Fe2+,Ca,Mn2+)(Si2O6)
村上石 (Murakamiite): LiCa2Si3O8(OH)
ペクトライト (pectolite): NaCa2(HSi3O9)
セラン石 (sérandite): Na(Mn2+,Ca)2(HSi3O9)
田野畑石 (tanohataite): LiMn2(HSi3O9)

これらの鉱物は、珪灰石と同様に、様々な地質学的環境で産出されます。化学組成の違いは、それぞれの鉱物の結晶構造や物理的性質に反映されます。

参考文献

黒田吉益、諏訪兼位『偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版』共立出版、1983年
松原聰『日本の鉱物』学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2003年

これらの文献は、珪灰石に関するより詳細な情報や、関連する鉱物についての情報を提供しています。より深い理解を深めたい場合は、これらの文献を参照することをお勧めします。

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