班田使

班田使（はんでんし）について

班田使は、古代日本の律令制度において、班田収授を行うために派遣された官人を指します。班田収授とは、農民に土地を配分する制度で、国家の農業政策の中心的な役割を果たしていました。班田使は主に京および畿内の地域に派遣され、土地の測量や配分、またその記録を担当していました。

班田使の役割と派遣の背景

各国の班田は、その国の国司が執り行いましたが、時には天平宝字4年（760年）の正月に任命された巡察使のように、中央から特命が派遣されることもありました。この巡察使は「校田駅使」とも呼ばれ、初めて土地の測量や収授を見回る役割を果たしました。

京や畿内においては、特に朝廷から国別に校田使や班田使が任命され、これにより中央の官人が現地の班田に関与し、班田授口帳に基づいて作業を進めました。班田が終了した際には、結果を田図帳にまとめ、民部省に報告する義務がありました。班田使の編成は、長官以下四等官、さらには多くの算師や史生によって構成されていました。この制度が続いたのは、9世紀の元慶3年（879年）までであることが分かっています。

班田使の初出とその歴史

班田使の派遣は、『日本書紀』によれば持統天皇6年（692年）に始まります。この年、班田収授法を実施するための官人が任命され、前年夏に進上された庚寅年籍に基づき班田が行われた記録があります。その後、しばらくの間記録から班田使の名は消えますが、文武2年（698年）、慶雲2年（705年）、和銅3年（710年）、霊亀2年（716年）、養老7年（723年）の間においても班田収授が行われたことが伝えられています。

再び班田使の記録が表れるのは、『続日本紀』の天平元年（729年）で、これは全国の口分田が収公され再分配されたことに関連しています。天平元年度においては、葛城王が山背国班田使に任命されたことが記録され、その時班田使には判官や史生が付随していたことも確認されています。この時期、班田作業は非常に過酷であったため、丈部竜麻呂という官人が自ら命を絶つ事件も発生しているほどでした。

班田使の編成と活動の例

その後、天平14年度（742年）には大和国班田使が任命され、長官や判官、准判官、主典などが編成され、翌年に田数帳が作成されています。天平勝宝7年度（755年）では、「七歳九月廿八日」の班田使の歴名が記録され、これには特に多くの実務担当者が含まれていました。

さらに、宝亀5年度（774年）や延暦5年度（786年）、延暦10年度（791年）においても、各地で班田使の任命や活動が記録されており、官人たちの構成や役割が綿密に文書化されています。

このように、班田使は古代日本における重要な役割を果たし、国家の農業政策や土地の管理において中心的な存在であったことがわかります。歴史的な記録からは、班田使の活動がいかにして日本の律令制度の成り立ちと運営に寄与したかが浮かび上がります。

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