現代ポルノ伝 先天性淫婦

概要

『現代ポルノ伝 先天性淫婦』は、1971年12月17日に公開された東映製作の日本映画です。池玲子主演の三作目であり、フランスのポルノ女優サンドラ・ジュリアンとの共演が大きな話題を呼びました。「日仏2大ポルノ女優の競演」というキャッチコピーが用いられ、当時としては非常に刺激的なプロモーションが展開されました。

あらすじ

物語は、母親から受け継いだ「先天性淫婦」の血を持つ女子高生・尾野崎由紀（池玲子）を中心に展開します。純粋な心とは裏腹に、肉体の欲望に翻弄される由紀は、様々な男性との関係を繰り返します。最終的には、由紀を救おうとするインテリ青年と、彼を追ってパリから来たサンドラ（サンドラ・ジュリアン）との間で、異常な三角関係に陥ります。この複雑な状況が、物語にエロティックで退廃的な雰囲気を醸し出しています。

キャストと登場人物

尾野崎由紀（演：池玲子）：ミッション系の女子高生でありながら、母親の情夫に処女を奪われたことから、自身の欲望を抑えきれず、多くの男性と関係を持つようになります。
本間洋一郎（演：宮内洋）：若手建築家で、由紀と愛し合うようになり、求婚しますが、過去の恋人であるサンドラの出現により、関係が複雑になります。
サンドラ（演：サンドラ・ジュリアン）：洋一郎の昔の恋人で、東洋哲学を専攻するパリジェンヌ。由紀の存在を知り、洋一郎にどちらを選ぶか迫ります。
尾野崎絹枝（演：三原葉子）：由紀の母親で、京都でバーを経営しています。後に東京でクラブを経営し成功させます。
山田鈴子（演：渡辺やよい）：尾野崎家の女中で、絹枝の身の回りの世話をする働き者です。
安川（演：藤木孝）：絹枝の情夫で、由紀の処女を奪う人物。
戸間口武（演：北村英三）：絹枝のパトロンで、キャバレーを経営する実業家。
大場清（演：小池朝雄）：新宿の暴力団幹部で、由紀と同棲しますが、後に落ちぶれてヒモとなります。
梶村仁（演：小島慶四郎）：ポルノフィルムの鑑賞客で、由紀のパトロンとなります。
お姉さま（演：杉本美樹）：由紀の先輩で、由紀に初めて身体を捧げます。
松村綾乃（演：女屋実和子）：松村の娘で、夫とは冷え切った関係にあります。
松村明人（演：渡辺文雄）：綾乃の夫で、松村家の跡取りを狙う野心家。
* 松村権一郎（演：遠藤辰雄）：松村コンツェルンの会長で、由紀を愛人にしようと目論みます。

その他、屋台の親爺（岡部正純）、万理江（牧淳子）など、多彩なキャラクターが登場します。サンドラの妄想シーンでは、イレズミの男たちが登場し、異様な雰囲気を醸し出しています。

スタッフ

監督は鈴木則文が務め、脚本は掛札昌裕と鈴木則文が共同で担当しました。撮影は赤塚滋、照明は金子凱美、音楽は鏑木創がそれぞれ担当しました。企画は天尾完次が担当し、刺青絵師として毛利清二が参加しています。

製作の背景

本作の企画は、東映社長の岡田茂が主導しました。岡田は、池玲子を「日本初のポルノ女優」として売り出し、話題性を高めようとしました。タイトルについても、当初は「先天性毒婦」という案がありましたが、最終的に「現代ポルノ伝 先天性淫婦」となりました。このタイトルには、当時のポルノ映画の流れや、海外の作品の影響が見られます。

サンドラ・ジュリアンの起用は、東映国際部の働きかけによるものです。当時、西洋女性の肉体への憧憬が強かった時代背景もあり、彼女の起用は大きな話題を呼びました。当初は『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』での共演が予定されていましたが、サンドラの体調不良により見送られ、本作で実現しました。彼女のギャラは中堅クラスで、京都見物や土産が提供されたといいます。

撮影

サンドラ・ジュリアンは撮影に真面目に取り組み、レズシーンや乱交シーンにも懸命に挑みました。撮影現場では、彼女が前貼りを拒否したことが、他の女優たちにも影響を与えました。しかし、池玲子は「大和撫子」としての矜持から、前貼りを続けました。これらのシーンは、映倫の審査で多くのクレームが付きましたが、最終的には公開されました。

サンドラ自身は「ポルノ女優」と呼ばれることに抵抗を感じており、「映画女優」としての誇りを持っていました。彼女は日本のマスメディアの取材にも積極的に応じましたが、その一方で、自身の裸体や性的な演技に対する世間の見方に苦悩していました。

影響と評価

本作は、日仏ポルノ女優の共演というキャッチコピーが話題を呼び、興行的にも成功を収めました。また、本作以降、日本の映画界で「ポルノ」という言葉が一般化しました。サンドラ・ジュリアンの存在は、その後の日本のポルノ映画に大きな影響を与え、欧米のエロティック映画が大量に輸入されるきっかけとなりました。特に、彼女のグラビアが男性誌を飾ったことは、洋物ポルノ文化の始まりとされています。

その他

本作のDVDは2008年に発売されています。また、同時上映作品として『関東テキヤ一家 浅草の代紋』があります。本作の製作には多くのスタッフが関わり、それぞれの分野でその才能を発揮しました。また、宮内洋が特撮ヒーロー物で著名になる以前の出演作の一つです。

本作は、1970年代初頭の日本の映画界における、ポルノ映画の隆盛と、その社会的な影響を考察する上で、非常に重要な作品であると言えるでしょう。また、池玲子とサンドラ・ジュリアンという二人の女優の、それぞれの魅力が最大限に引き出された作品でもあります。

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