琉球における信仰

琉球における信仰：琉球神道以外の信仰

琉球における信仰は、琉球神道のみならず、多様な信仰が共存する独特の文化を形成してきました。ここでは、琉球神道以外の主要な信仰について解説します。

ヒヌカン信仰

ヒヌカン（火の神）信仰は、琉球土着の信仰であり、琉球神道とは異なる発展を遂げました。ヒヌカンはティダ（日神）と同一視され、按司や王権の権威付けに利用され、琉球王府の祭政一致体制の基盤となりました。

起源と特徴

ヒヌカンの起源は、3つの石を並べて拝んだことに始まるとされます。この石の上に鍋を置いて煮炊きしたことから、竈の神としての側面も持ち合わせていました。ヒヌカンは火そのものから派生し、竈、一家の繁栄、家庭の冠婚葬祭など、家を守護する存在として広く信仰されています。

民俗信仰

民間信仰としてのヒヌカンは、神職の職業信仰が家庭に広まり、道教の竈神信仰と習合したと考えられています。各家庭の竈（現代はコンロ）の上にヒヌカンのお札を貼り、女性が拝む風習が今も残っています。

ヒヌカンは、神々と交信する場所として捉えられ、女性（主に老女や祖母）が「グイス」と呼ばれる祝詞を唱えます。毎月旧暦の朔望には、「チムガカイ」（気がかりな事）を唱え、白米と沖縄線香を供えます。ヒヌカンは女性のみが触れ、拝むことができ、男系継承されるトートーメーとは対照的に、女系継承されるとされています。

他の信仰との比較

神道の火の神であるカグツチや、日本本土の三宝荒神と類似点が見られますが、ヒヌカンはより家庭的な守護神としての性格が強いです。

仏教

琉球における仏教は、当初、国王や王族、士族の一部が崇拝するものでしたが、王国廃止後に庶民にも普及しました。宗派にこだわらず、ユタを呼ぶこともあります。位牌はトートーメーと呼ばれ、供物には豚の角煮などの肉類も供えられます。

古琉球の仏教

13世紀後半に禅鑑という禅師が来琉し、浦添に極楽寺（後の龍福寺）を建立したのが、琉球における仏教の始まりとされています。その後、頼重法印が護国寺を開き、真言宗を伝えました。尚真王は円覚寺を創建し、臨済宗を広めました。円覚寺は琉球第一の巨刹として繁栄し、歴代国王の肖像画が安置されていました。

近世の仏教

17世紀初頭には、袋中が浄土宗を伝え、エイサーの起源となりました。薩摩藩による浄土真宗の禁圧がありましたが、19世紀には一向宗の摘発も行われました。

琉球における仏教の特徴

琉球の仏教は、国家安泰や実権者の擁護のために導入されましたが、民衆の信仰対象となる時期を持たず、王国崩壊を迎えました。しかし、御嶽に線香や香炉が設置されるなど、民間信仰にも影響を与えました。琉球人は仏教の内容を琉球固有のものに変え、酒を供えるなど、独自の形式で仏教を取り入れました。

民俗信仰

仏壇では、ヒヌカンと同様に、毎月旧暦の朔望にトートーメーにお供え物や掃除を行う風習があります。

道教

18世紀初頭には道教が信仰されていたことが確認されており、土着のヒヌカン信仰と融合し、女性の間で広く信仰されました。

神道

15世紀に天照大神を招き、長寿宮（後の浮島神社）を創建したのが、史書で確認できる琉球最初の神社建立です。琉球八社があり、多くは熊野権現を祀っています。琉球国一の宮は波上宮です。

キリスト教

17世紀初頭に八重山で布教が行われましたが、禁教政策により弾圧されました。19世紀にはフランスやイギリスの宣教師が来琉し、布教活動を許可するよう王府に圧力をかけました。琉球処分後、1887年に県外のキリスト教伝道師団が来琉し広まりました。

イリキヤアマリ信仰

かつて八重山諸島で信仰されていた神で、火や農耕を教えた文化神とされています。琉球王国によって邪教とみなされ弾圧され、廃れました。

琉球の信仰は、多様な要素が複雑に絡み合い、独特の文化を形成しています。それぞれの信仰の起源、変遷、特徴を理解することで、琉球文化の奥深さを知ることができます。

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