波上宮

波上宮（なみのうえぐう）

沖縄県那覇市に位置する波上宮は、那覇港を見晴らす高台に鎮座する神社です。「なんみんさん」「ナンミン」という愛称で地元の人々に親しまれ、琉球八社の一つとして、また沖縄総鎮守として篤い信仰を集めています。近代社格制度では官幣小社に列格され、現在は神社本庁の別表神社となっています。年間を通じて多くの参拝客が訪れ、特に5月17日の例大祭に合わせ開催される「なんみん祭」は、数々の催し物で大いに賑わいます。

祭神

波上宮は、主祭神として伊弉冊尊（いざなみのみこと）、速玉男尊（はやたまをのみこと）、事解男尊（ことさかをのみこと）の三柱をお祀りしています。これらの祭神から、熊野信仰との関連性が指摘されています。また、相殿神として、竈神（火神）、産土大神、少彦名神（薬祖神）もお祀りされています。

歴史

創建年代は定かではありませんが、琉球八社が真言宗寺院に併設されていた歴史から、察度王の時代、1368年頃に護国寺の開山と同時に創建されたのではないかという説があります。一方で、1384年に亡くなった頼重法印が護国寺を開山したとする説もあり、波上宮の創建はそれ以前とする説には異論もあります。いずれにしても、波上宮は琉球王国時代から存在し、王府が管理する官社として重要な役割を果たしていました。琉球八社の中で創建年が判明している神社は、長寿宮（浮島神社）が1451年、安里八幡宮が1466年であることから、15世紀頃には創建されていたと考えられます。

古くは、海の彼方にあるとされる神の国（ニライカナイ）の神々へ、豊穣や平穏を祈る聖地として、波の上の崖端が拝所とされていました。この地では、毎年、定められた日に、人々が故郷の方角に向けて祈りを捧げる「ネグミ拝み」という祭りが行われていました。

1623年には、『おもろさうし』に波上宮の鎮座地を指すと思われる「波の上、端ぐすく」という言葉が登場します。このことから、波上宮は古くからこの地に存在し、神聖な場所として崇められてきたことがわかります。また、『神と村』では、波上宮のある場所は、古代には共同の葬所であった可能性が指摘されています。

1605年に書かれた『琉球神道記』には、波上宮の創設に関する伝承が記されています。それによると、南風原の崎山里主が浜辺で光る霊石を見つけ、それを祀ったところ豊漁が続くようになったため、この霊石を奪おうとする神々から逃れるため、当地に社を建てて祀ったというものです。この伝承は、琉球古来の石体信仰と熊野信仰が結びついたものと考えられています。この伝承は、1713年の地誌『琉球国由来記』にも記録されています。

1368年、頼重法印が波上宮の別当寺として護国寺を建立したとされます。その後、一時衰退しましたが、1522年に紀伊国熊野から琉球に漂着した日秀上人によって再興されました。再興に際し、日秀は熊野三所大権現の本地仏である阿弥陀如来、薬師如来、千手観音を安置しました。王国時代には、王や役人が公式行事として参拝する、琉球八社の中でも最も格式の高い神社でした。

当時の那覇は浮島であり、1451年に長虹堤が建設され、沖縄本島と陸続きになりました。これを機に那覇港は外国船が寄港できる港として整備され、多くの人々が移り住み発展しました。波の上は「端城」と呼ばれ、那覇の突端であり、神の居住地として神聖な場所でした。波上宮は、古くから琉球古来の神を祀る聖地であり、その周囲には他国の信仰の場となる施設が建てられました。

1633年に社殿が焼失しましたが、本地三尊像は護国寺に移され難を逃れました。1635年に社殿は再建されました。1803年には社殿が大破したため、それまでの本地三尊像を3殿に分けて安置する形式から、1殿に安置する三戸前形式に改築されました。

明治時代に入り、近代社格制度によって官幣小社に列格されました。1890年 5月17日に御鎮座告祭式が行われ、この日が1893年から例大祭の日となりました。1889年には沖縄県が国幣中社の認定を申請していましたが、皇室の祖神である伊弉冊尊を祀っていたことが理由で、格上げのうえ列格されたとされています。1935年には御再興三百年祭が開催され、1938年頃には神苑が整備されました。

太平洋戦争末期の1945年、沖縄戦で社殿は全て焼失しましたが、ご神体は摩文仁村に避難し難を逃れました。戦後、1948年には別表神社に指定され、1952年から復興に着手しました。1953年にハワイ移民の寄進により本殿と社務所が再建され、1961年には拝殿が再建されました。1972年の沖縄本土復帰の際には、皇室より幣帛料を賜りました。1987年には旧社務所が撤去され、新しい社務所が新築されました。1990年には一の鳥居が改築され、1993年には本殿と拝殿が再建され、正遷座祭が催行されました。1994年には全整備事業が完了し、竣功奉告祭が執り行われました。2003年には第二社務所が新築されました。2006年には、長年信仰の場、景勝地として親しまれてきたことを理由に、波上宮の敷地一帯が「波上（なんみん）」として那覇市から史跡・名勝文化財に指定されました。

現在、境内には沖縄県神社庁の事務所が置かれ、沖縄における神道の活動拠点の一つとなっています。

浮島神社

波上宮の境内には内仮宮として浮島神社があります。この神社は、尚金福王の時代に那覇と首里を結ぶ長虹堤の建設が難航したため、1451年に天照大神を勧請した長寿宮が起源です。この長寿宮が後に浮島神社と呼ばれるようになり、1988年に波上宮内仮宮に遷座されました。長寿宮は、史書で確認できる琉球最初の神社建立として知られています。

施設・遺構など

[境内写真1]
[境内写真2]
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[境内写真7]
[境内写真8]

祭事

毎月の祭祀

- 1日・17日：月次祭

主たる年間祭祀

[年間祭祀の一覧]

アクセス

沖縄都市モノレール（ゆいレール）

- 県庁前駅より西へ1km。駅前のパレットくもじ前バス停から那覇バスに乗車し、西武門バス停下車。

那覇バス

- 1番（首里牧志線）・2番（識名開南線）・3番（松川新都心線）・5番（識名牧志線）・15番（寒川線）・45番（与根線）で西武門（にしんじょう）バス停下車。（またはバスマップ沖縄を参照）

国道58号

- 泉崎交差点から北西へ1km。

映画

- 『風が通り抜ける道』沖縄県後援、カンヌ国際映画祭2023年披露上映作品、沖縄国際映画祭2023年正式出品作品、一般劇場公開2024年（イオンエンターテイメント）

参考文献

- 鳥越憲三郎『琉球宗教史の研究』角川書店、1965年。
- 鳥越憲三郎『琉球宗教史の研究』東京教育大学、1962年。
- 仲松弥秀『神と村 : 沖縄の村落』琉球大学沖縄文化研究所、1975年。
- 谷川健一編『日本の神々 -神社と聖地- 13 南西諸島』白水社 1987年
- 古橋信孝三浦佑之森朝男編『古代文学講座11 霊異記・氏文・縁起』勉誠社 1995年
- 外間守善校注『おもろさうし上』岩波文庫 2000年
- 入江孝一郎『諸国一の宮』移動教室出版事業部 2001年
- 全国一の宮会編公式ガイドブック『全国一の宮めぐり』全国一の宮会 2008年

外部リンク

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