琉球電力公社

琉球電力公社（りゅうきゅうでんりょくこうしゃ、Ryukyu Electric Power Corporation）は、アメリカ合衆国統治下の沖縄において、米国民政府令に基づき設立された発送電事業を担った公社です。沖縄電力の前身であり、沖縄の電力供給体制の基礎を築きました。

概要

第二次世界大戦後の沖縄では、米軍から払い下げられた小型発電機や米国の援助資金で購入した発電機を用いて、多数の小規模な準電気事業者が分散して発電を行っていました。1948年頃から、米軍は沖縄全島電化計画を策定し、浦添村（現在の浦添市）牧港に牧港火力発電所を建設するとともに、送電系統の整備を進めることになりました。

1952年には、立法院で電気事業法が制定されましたが、既存の配電会社を追認する形となったため、発送電部門と配電部門が分離されました。そして1954年2月26日、米国民政府令第129号に基づき、発送電部門を担当する「琉球電力公社」が設立され、配電業務は既存の民営配電会社が行うことになりました。1972年5月15日の日本復帰に伴い解散し、沖縄振興開発特別措置法に基づき、琉球電力公社の全発送電部門と一部の配電部門は、特殊法人の沖縄電力（後に民営化）に引き継がれました。

沿革

1952年9月：立法院で電気事業法（1952年立法第39条）が制定される。
1953年4月：牧港火力発電所運転開始。
1954年2月：琉球電力公社設立。
1954年10月：牧港火力発電所の所有権を琉球電力公社が取得（米軍に管理を委託）。
1955年6月：発電船ジャコナ号を連結し、運転開始。
1956年5月：発電船インピーダンス号を連結し、運転開始。
1958年7月：米軍との間に電力施設の管理・運営・維持に関する契約を締結。
1960年8月：立法院で農山漁村電気導入促進法（1960年立法第92号）が制定される。
1963年2月：発電船インピーダンス号のドック入りにより、節電のための灯火管制実施。
1965年6月：金武火力発電所運転開始。
1965年7月：米軍より全島電力系統の運営を引き継ぐ。
1967年11月：沖縄本島北部電化実施計画を発表（1970年に工事完了）。
1968年1月：発電船インダクタンス号を連結し、運転開始。
1969年6月：北谷火力発電所運転開始。
1970年7月：発電船ジャコナ号廃止。
1971年5月：発電船インダクタンス号廃止。
1972年5月：本土復帰に伴い解散。

組織

性格

琉球電力公社は、定款第1条により「米国民政府一機関」として設立されました。役員は琉球列島首席民政官によって任命され、その指示と裁量によって免職されると定められていました。

理事

首席民政官によって5人の理事が任命され、そのうち1人が総裁兼理事長を務めました。1964年以降は、総裁職は琉球側に移管されました。

本土復帰前の沖縄の電力供給

本土復帰前の沖縄では、発送電と配電の分離、配電会社の地域独占、複数の配電会社の認可などの特徴が見られました。

電気事業法

1952年9月29日、立法第39号として電気事業法が制定されました。この法律は、日本本土の発送配電一貫経営とは異なり、既存の配電会社を追認する形であったため、沖縄では発送電部門と配電部門が分離されていました。1953年2月2日には、電気委員会規則が制定されました。

沖縄本島

沖縄本島では、1953年に沖縄配電、松岡配電、中央配電が、1955年に比謝川配電と与那原配電（後の東部配電）、1957年に名護配電が設立され、6配電会社体制となりました。

沖縄配電：渡嘉敷真睦と國場幸太郎によって1953年に設立され、那覇地域から供給を開始し、後に糸満地域へと拡大しました。1965年には東部配電を吸収合併し、1976年に沖縄電力と合併しました。
松岡配電：松岡政保によって1954年に設立され、浦添・宜野湾地区から供給を開始し、後に北谷・中城地区にも拡大しました。1976年に沖縄電力と合併しました。
中央配電：城間盛善と安田善次が中心となり、1953年に設立された会社で、沖縄本島中部地域を供給区域としていました。1976年に沖縄電力と合併しました。
東部配電：嶺井元奉によって1955年に設立され、与那原地区を供給区域としていました。当初は「与那原配電」という名称でしたが、後に周辺地域に拡大し、「東部配電」となりました。1965年に沖縄配電に吸収合併されました。
比謝川配電：当山真志によって1955年に設立され、嘉手納・読谷地域を供給区域としていました。嘉手納基地など米軍関係の需要が大きかったのが特徴です。1976年に沖縄電力と合併しました。
名護配電：元々名護町営の電気事業でしたが、1957年に民営化されました。岸本永幸が社長に就任し、周辺地域へ供給範囲を拡大しました。1976年に沖縄電力と合併しました。

沖縄本島以外

沖縄本島以外では、八重山電力、宮古電力、久米島電力、伊江村営、伊是名村営などの電力会社が設立されました。

久米島電力：琉球政府の農漁村電化事業のモデルケースとして1956年に設立されました。発電所は琉球電力公社が建設し、久米島電力に貸与されました。1971年に琉球電力公社に移管されました。
宮古電力：元々平良市営の電気事業でしたが、1959年に民営化され「宮古電力」となりました。1971年に琉球電力公社に移管されました。
八重山電力：1959年に設立され、石垣市と石垣電灯の電気事業を引き継ぎました。1972年に琉球電力公社に移管されました。

その他の小規模電気事業者

宜野座村、久志村（現在の名護市）、伊江村（伊江島）、伊是名村農業協同組合（伊是名島）、伊平屋村（伊平屋島、野甫島）、渡嘉敷村（渡嘉敷島）、座間味村（座間味島、阿嘉島、慶留間島）、与那城村（平安座島、宮城島、伊計島）、与那国町（与那国島）、勝連村（浜比嘉島）、粟国村（粟国島）、渡名喜村（渡名喜島）、竹富町（西表島、竹富島、波照間島、黒島、小浜島）、知念村（久高島）、北大東村農業協同組合（北大東島）、南大東村（南大東島）、多良間村（多良間島）、池間漁業協同組合（池間島）、今帰仁村（古宇利島）など、多くの小規模電気事業者が存在していました。

脚注

参考文献

沖縄電力編『沖縄電力の現状昭和48年』沖縄電力株式会社、1973年
古堅哲『うるまの灯沖縄の電力事業史』日本電気協会、1980年
沖縄電力社史編纂委員会編『沖縄電力十五年史』沖縄電力株式会社、1989年

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