琴別府要平

琴別府要平：不屈の精神で土俵を沸かせた力士

琴別府要平（ことべっぷ ようへい）は、1965年10月17日生まれ、大分県別府市出身の元大相撲力士です。佐渡ヶ嶽部屋に所属し、最高位は東前頭筆頭にまで上り詰めました。得意手は突き、押しで、178cm、193kgという恵まれた体格を生かした、迫力ある相撲が持ち味でした。本名は三浦要平。

苦難を乗り越えて掴んだ栄光

実家は豆腐店を営んでおり、父は別府市議会議員を務めていました。別府市長の紹介で佐渡ヶ嶽部屋に入門し、1981年3月場所に初土俵を踏みました。順調に番付を上げていましたが、1989年7月場所中に風邪をこじらせ、急性腎炎を発症。さらに尿毒症も併発し、生死の境をさまようこととなりました。一時は人工透析も検討されましたが、奇跡的に回復。しかし、1年以上の休場を余儀なくされ、番付は序ノ口まで降下してしまいます。

1990年9月場所、西序ノ口39枚目で土俵に復帰した琴別府は、そこから驚異的なスピードで番付を駆け上がり、1992年5月場所には十両に復帰。同年11月場所には、見事新入幕を果たします。序ノ口まで陥落した力士が幕内まで返り咲いたのは、史上初の快挙でした。この復活劇から、同じ部屋の先輩である琴風になぞらえて「新・地獄を見た男」と呼ばれるようになりました。

幕内での活躍と度重なる試練

新入幕の場所では、巨体を利した徹底的な押し相撲で10勝5敗と二桁勝利を挙げ、敢闘賞を受賞。翌1993年1月場所では、当時大関昇進をかけていた関脇・貴花田を破り、さらに注目を集めます。しかし、13日目に旭道山の蹴手繰りで左太腿を負傷し、休場。その後も、蹴手繰りによる負傷と休場を繰り返してしまいます。相撲雑誌には、やくみつるによって『けたぐり地獄』と題した漫画が掲載されたほどでした。

その後、体重の増加によって動きが鈍くなり、1997年1月場所を最後に幕内から陥落。十両でも成績が振るわず、11月場所には幕下に陥落し、現役を引退しました。

引退後の人生とラーメン店経営

引退後は、相撲協会には残らず、ラーメン店での修行を経て、千葉県鎌ケ谷市で「黒門ラーメン 千葉本店」を経営。その後、実家の豆腐店を継ぐため帰郷しました。一時、生活に困窮する時期もありましたが、地元のファンからの要望もあり、姉と共に2013年から「らーめんいっちゃん 琴別府店」をオープン。店名は亡き父の愛称「いっちゃん」と、父が一番可愛がっていた「琴別府」の名前から付けられました。なお、現役時代から脳卒中を2度発症しており、満身創痍の状態です。

その他のエピソード

佐渡ヶ嶽部屋からは、琴千歳、琴冠佑、琴岩国、琴春日、琴欧州など、出身地にちなんだ四股名の関取が多く輩出されています。琴別府もその一人ですが、姓名の姓に当たる上の名に、半濁音を含んだ四股名で幕内に昇進した力士は、大相撲史上琴別府ただ一人です。

また、琴別府がスカウトされた際、師匠は別の力士をスカウトしに来ていましたが、その力士は怪我などで伸び悩み、琴別府だけが出世するという結果になりました。

主な成績

• - 通算成績：457勝433敗82休 勝率.513
• - 幕内成績：164勝210敗16休 勝率.439
• - 現役在位：101場所
• - 幕内在位：26場所
• - 三賞：1回（敢闘賞：1回）
• - 各段優勝：十両優勝1回、幕下優勝2回、序二段優勝1回

琴別府要平は、数々の苦難を乗り越え、土俵で輝きを放った不屈の力士でした。その波乱万丈な人生は、多くの人々に勇気と感動を与えています。

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