甘南美寺

白華山 甘南美寺（かんなみじ）

概要

甘南美寺は、岐阜県山県市長滝にある臨済宗妙心寺派の寺院で、山号を白華山と称します。本尊は秘仏の千手観世音菩薩で、美濃三十三観音霊場の第十三番札所、美濃四国八十八札場の第六十五番札所、そして美濃七福神の一つ（恵比寿）としても信仰を集めています。伊自良湖の湖畔に位置し、境内には樹齢350年以上とされるエドヒガンザクラがあり、岐阜県の天然記念物に指定されています。

歴史

寺伝によれば、鎌倉時代の建久年間に高阿弥、那智阿弥の夫婦の念仏行者が伊勢国で救世観音を授かり、美濃国山県郡の釜ヶ谷山頂に祀ったのが始まりとされています。その後、天文年間に伊勢国の漁師が美濃国から発せられる光に導かれ、その光が釜ヶ谷の観音像からであると突き止めました。この出来事をきっかけに、観音像は麓の長滝に移されたと伝えられています。

1571年（元亀2年）頃に白華山甘南美寺として創建され、中興第一世暘門和尚の師である晙桑和尚を勧請開山としました。晙桑和尚は梵鐘を新鋳し、碑銘石を建立するなど、境内の整備に尽力しました。明治時代に入り、中興第一世暘門和尚によって山門や鐘楼が再建され、中興第二世微宗和尚によって庫裡が再建されました。また、寛文年間に造営された本堂が台風で倒壊したため、1912年（大正元年）から1922年（大正11年）にかけて再建され、往時の姿を取り戻しました。

寺号の由来

甘南美という寺号は、「甘南備」または「神奈備」が転じたものとされています。甘南美寺の奥の院は甘南備神社とも呼ばれ、橘諸兄の父である美努王を祀っています。南北朝時代には、楠木正成の夫人である久子が、同族滅亡後に神奈備を巡り、この地を気に入り甘南備神社に籠ったと伝えられています。彼女は、故郷である河内国甘南備村の地名をこの地に与え、平井、長滝、掛、松尾などの地名が生まれたとされています。

本尊

本尊の十一面千手観音菩薩は、行基の作と伝えられています。像の高さは約1.8mで、両脇には伝教大師作と伝わる不動明王像と毘沙門天像が安置されています。

周辺

甘南美寺の近くには七社神社（長滝七社神社）があり、その横には楠木正成夫人の久子の墓と伝えられる「八王寺宮」と刻まれた墓があります。

文化財

甘南美寺には、以下の文化財が指定されています。

天然記念物
花の木の大樹（山県市指定）
甘南美寺のモミの木（山県市指定）
甘南美寺のサクラ（岐阜県指定）
名勝
甘南美寺（山県市指定）

所在地とアクセス

所在地：岐阜県山県市長滝27-11

アクセス：

山県市自主運行バス：山県バスターミナルよりハーバス伊自良線「伊自良湖口」行き終点下車、徒歩約20分（日祝日全便運休）
自家用車：JR岐阜駅より約45分

甘南美寺は、豊かな自然と歴史に彩られた寺院です。四季折々の風景を楽しみながら、静かに過ごすひとときを求めて訪れてみてはいかがでしょうか。

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