甘露の変

甘露の変（かんろのへん）

甘露の変は、835年に中国唐代で発生した重要な政治事件で、文宗と官僚によって策謀された宦官に対する誅殺未遂の出来事です。この事件は、唐王朝中期以降、宦官の権力が強化され、その支配が確立される要因となりました。

事件の前史

唐代には、高力士の時期から始まり、李輔国や程元振といった宦官が政治に関与し、権力を行使するようになりました。高力士は玄宗皇帝の私的秘書として権力を握っていましたが、彼以降の李輔国は安史の乱の混乱を受けてその権力を大きく拡大しました。李輔国は一時、非常に高い地位に就くほどの権勢を誇り、宦官は単なる皇帝の秘書から政治的アクターへと変わっていくこととなりました。

宦官が優遇された理由は、彼らが子孫を残さないため、皇帝に対する忠誠心が強いことなどが挙げられます。特に国家が混乱した時期には、彼らが反乱を起こす懸念が少なく、軍閥に対抗するために権力を与えられることがしばしばありました。

事件の経緯

文宗皇帝は即位後、宦官の王守澄によってその権力を制約されており、不満を抱いていました。そこで文宗の意を受けた礼部侍郎の李訓と太僕寺卿の鄭注は、王守澄とその対立者である仇士良を争わせることを計画しました。この策略の一環として、鄭注は軍を動かす権限を持つ節度使に任命され、準備を進めました。

この計画は当初順調に進行し、王守澄は権力を失って誅殺されました。しかし、文宗と共に王守澄の葬儀に参加しようとしていた仇士良らの宦官勢力を壊滅させるために、鄭注は出兵の準備をしていました。

ところが、功名心に駆られた李訓が、王守澄の葬儀前に宦官を一堂に召集しようとしました。理由は「甘露が降った」という瑞兆を根拠にしており、これは宦官全員が確認する慣例に基づいていました。835年11月21日、左金吾衛の韓約大将軍が朝会で「甘露が降った」と報告し、多くの宦官が確認のために動き出しました。

その際、左金吾衛の裏庭には幕が張られ、その陰に郭行余や羅立言らが兵を隠していました。しかし、幕の隙間から兵の姿が見え、仇士良を含む宦官たちは急いで文宗を連れ出し逃げる事態に陥りました。結果、文宗は李訓と鄭注を裏切り者として処刑せざるを得なくなりました。

この事件の結果、宦官は文宗を傀儡として権力を掌握し、文宗は「私は家奴に制御されている」と嘆くことになりました。そして、彼は4年後に病死し、宦官の権勢はさらなる強化を遂げることになりました。

まとめ

甘露の変は、唐代の権力闘争における重要な出来事であり、皇帝と宦官間の緊張を象徴します。この事件は、宦官が政治に浸透し、権力を独占することへと繋がる大きなきっかけとなりました。

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