田中素香

田中素香（たなか そこう）

プロフィール

田中素香は、1945年生まれの日本の経済学者で、国際金融論、経済統合論、ヨーロッパ経済論を専門としています。東北大学名誉教授であり、元日本国際経済学会会長を務めました。経済学博士の学位を持ち、特にヨーロッパ経済、中でもユーロの研究における権威として知られています。

略歴

福岡県出身で、福岡県立修猷館高等学校を経て、1967年に九州大学工学部電子工学科を卒業しました。その後、経済学に転じ、1969年に九州大学経済学部を卒業、1971年には九州大学大学院経済学研究科修士課程を修了しています。同年に九州大学大学院経済学研究科博士課程を中退し、九州大学経済学部の助手として研究者のキャリアをスタートさせました。

下関市立大学経済学部講師、助教授を経て、東北大学経済学部助教授に就任。1983年には九州大学より経済学博士号を取得しています。1986年に東北大学経済学部教授に昇任、1999年には大学院重点化に伴い東北大学大学院経済学研究科教授となりました。2004年からは中央大学経済学部教授を務めています。また、2006年から2008年にかけて日本国際経済学会会長を務め、現在は同会の顧問です。この他、日本証券経済学会、信用理論研究学会、日本EU学会にも所属しています。

研究活動

田中教授は、欧州経済、特にユーロに関する研究で著名です。2010年の欧州危機時には、多くの経済学者がユーロ崩壊やギリシャのユーロ離脱を予測する中で、ユーロ崩壊は現実的ではないと主張しました。また、ギリシャに対しては、ドイツが懲罰的な態度を取るべきではないと述べました。結果として、ユーロは崩壊せず、ギリシャもユーロ圏からの離脱を免れました。しかしながら、田中教授はユーロが抱える構造的な問題が依然として残っているとも指摘しています。

受賞歴

2001年7月には、EC統合に関する研究・教育への顕著な貢献が評価され、欧州委員会より「Jean Monnet Chair Professor」の称号を授与されました。

主な著書

単著

『欧州統合：EC発展の新段階』（有斐閣、1982年）
『EC統合の新展開と欧州再編成』（東洋経済新報社、1991年）
『ユーロ：その衝撃とゆくえ』（岩波書店、2002年）
『拡大するユーロ経済圏：その強さとひずみを検証する』（日本経済新聞出版社、2007年）
『ユーロ：危機の中の統一通貨』（岩波書店、2010年）
『ユーロ危機とギリシャ反乱』（岩波書店、2016年）

共著

（渡瀬義男）『ゼミナールECの財政と経済政策』（東洋経済新報社、1993年）
（長部重康・久保広正・岩田健治）『現代ヨーロッパ経済』（有斐閣、2001年／新版、2006年／第3版、2011年／第4版、2014年）

編著

『EMS：欧州通貨制度：欧州通貨統合の焦点』（有斐閣、1996年）
『単一市場・単一通貨とEU経済改革』（文眞堂、2002年）
『世界経済・金融危機とヨーロッパ』（勁草書房、2010年）

共編著

（木下悦二）『ポスト冷戦の世界経済』（文眞堂、1992年）
（藤田誠一）『ユーロと国際通貨システム』（蒼天社出版、2003年）
（春井久志・藤田誠一）『欧州中央銀行の金融政策とユーロ』（有斐閣、2004年）
（羽場久美子・小森田秋夫）『ヨーロッパの東方拡大』（岩波書店、2006年）
（馬場啓一）『国際経済関係論：対外経済政策の方向性を探る』（文眞堂、2007年）
（岩田健治）『現代国際金融』（有斐閣、2008年）
（馬場啓一・木村福成）『検証・金融危機と世界経済：危機後の課題と展望』（勁草書房、2010年）
（塩見英治・中條誠一）『東アジアの地域協力と経済・通貨統合』（中央大学出版部、2011年）
（林光洋）『世界経済の新潮流：グローバリゼーション、地域経済統合、経済格差に注目して』（中央大学出版部、2012年）

訳書

パオロ・チェッキーニ『EC市場統合・1992年：域内市場完成の利益』（東洋経済新報社、1988年）
ロルフ・H.ハッセ『EMSからEC中央銀行へ』（相沢幸悦との監訳、同文舘出版、1992年）
ヴォルフガング・パーペ編『東アジア21世紀の経済と安全保障：ヨーロッパからの警告』（佐藤秀夫との共訳、東洋経済新報社、1997年）
マリオ・モンティ『EU単一市場とヨーロッパの将来：モンティ報告』（東洋経済新報社、1998年）
J.ペルクマンス『EU経済統合：深化と拡大の総合分析』（文眞堂、2004年）
ポール・デ・グラウエ『通貨同盟の経済学：ユーロの理論と現状分析』（山口昌樹との共訳、勁草書房、2011年）

外部リンク

田中素香 - KAKEN 科学研究費助成事業データベース
クローズアップ現代「ギリシャ発　欧州危機の行方」出演者 田中素香　野口修司 - NHK (2010年5月17日)


田中素香教授は、その専門知識と深い分析力で、欧州経済の動向を読み解き、日本の経済学界に大きな貢献をしています。

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