甲突川五石橋

甲突川五石橋：鹿児島市の歴史を刻む石橋群

甲突川五石橋は、鹿児島県鹿児島市を流れる甲突川に、かつて架かっていた五つの美しい石橋の総称です。これらの橋は、上流から順に玉江橋、新上橋、西田橋、高麗橋、武之橋と呼ばれていました。

概要

これらの石橋群は、江戸時代末期に天保の改革を主導した家老、調所広郷が肥後国の石工、岩永三五郎を招き建造されました。長きにわたり、生活を支える橋として、また貴重な文化遺産として地域の人々に愛されてきました。

しかし、1993年8月6日に発生した鹿児島大水害により、五石橋のうち新上橋と武之橋の二橋が流失するという悲劇に見舞われました。残った玉江橋、西田橋、高麗橋の三橋は、その歴史的価値を後世に伝えるため、浜町にある石橋記念公園に移設され、保存されています。

各橋の詳細

玉江橋：小野一丁目・永吉二丁目と下伊敷一丁目を結ぶ橋で、1849年に架設されました。四連アーチ橋であり、橋の名前は当時の藩主、島津斉興の衣類につけられた「玉の印」に由来するという説や、付近に湿田が多かったことに由来するという説があります。近隣の鹿児島市立玉江小学校もこの橋にちなんで名付けられました。
新上橋：鷹師二丁目と新照院町を結んでいた橋で、1845年に架設されました。四連アーチ橋で、中央二つのアーチ径間は10.8m、両側は9.5mでした。1993年の鹿児島大水害で流失し、現在はその姿を見ることはできません。
西田橋：西田一丁目と平之町・西千石町を結ぶ橋で、1846年に架設されました。全長50mの四連アーチ橋で、眼鏡橋とも呼ばれていました。1953年には鹿児島県の有形文化財に指定され、鹿児島県道24号鹿児島東市来線の路線上に存在していました。
高麗橋：高麗町と加治屋町を結ぶ橋で、1847年に架設されました。四連アーチ橋で、中央二つのアーチ径間は12.8m、両端は11.2mでした。現在は石橋記念公園に移設、保存されています。
* 武之橋：下荒田一丁目と新屋敷町を結ぶ橋で、1848年に架設されました。五連アーチ橋で、甲突川に架かる橋の中で最も長く、全長71mでした。鹿児島県道20号鹿児島加世田線の路線上に存在していましたが、1993年の鹿児島大水害で流失しました。

水害と移設

1993年の大水害で新上橋と武之橋が流失した後、残りの三橋の保存について様々な議論がありました。最終的には、これらの橋を移設し保存することが決定され、2000年に石橋記念公園が開園し、玉江橋、西田橋、高麗橋が移設保存されています。残念ながら、流失した二橋の復元計画はありません。

流失した二橋の石材は十分な量が残っていなかったため、回収された石材は記念公園の周辺整備に活用されています。

甲突川五石橋は、鹿児島の歴史と文化を今に伝える貴重な遺産です。石橋記念公園を訪れ、その美しい姿を間近で感じてみてください。

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