申鉉碻

申鉉碻（シン・ヒョンファク、1920年12月29日 - 2007年4月26日）は、大韓民国の政治家、実業家であり、その生涯は激動の韓国現代史と深く結びついています。本貫は平山申氏で、創氏改名時の日本名は平林佑國、号は于湖（ウホ）です。息子に元国務総理室政策次長の申喆湜がいます。

生い立ちと官僚時代

慶尚北道漆谷郡で生まれた申鉉碻は、大邱高等普通学校、京城帝国大学を経て、1943年に高等文官試験に合格し、農商務省に入省しました。商務系官僚としてキャリアをスタートし、終戦時は軍需省の軍需管理官を務めました。

韓国独立後は、大邱大学校教授を経て、1951年に商工部工業局工程課長として官界に復帰。その後、商工部電気局、鉱務局、工業局の各局長を歴任しました。1957年には復興部次官兼外資庁長官代理に就任し、1959年には復興部長官に昇進しましたが、四月革命により逮捕され、官界を追放されました。しかし、その後は実業界に転身し、国民学院理事長、東海電力・双龍産業社長などを歴任しました。

政界復帰と国務総理就任

1973年の第9代総選挙で民主共和党の公薦を受け、政界に復帰。1978年の第10代総選挙でも再選を果たし、その間、1975年には保健社会部長官、1978年には経済企画院長官兼副総理を務めました。特に保健社会部長官在任中には、医療保険法改正と1977年の医療保険実施に大きく貢献しました。

1979年、朴正煕大統領暗殺事件が発生すると、崔圭夏国務総理が大統領に昇格。国務総理不在の中、申鉉碻は国務総理の職務を実質的に代行し、12月13日に国務総理に正式に就任しました。しかし、その前日の12月12日には粛軍クーデターが勃発。全斗煥率いる軍部が実権を掌握する中で、申鉉碻は有効な政策を打ち出すことができず、翌1980年5月21日に国務総理を解任されました。その後、憲法改正審議委員会委員長、国政諮問委員会委員、韓日協力委員会委員長などを歴任しました。

実業界での活躍と晩年

政界引退後は、三星物産会長、三星美術文化財団理事長、全国経済人連合会企業倫理委員長など、実業界で活躍しました。盧泰愚政権下では行政改革委員会委員長を務めました。1999年には全経連企業倫理委員会委員長と朴正煕大統領記念事業会長に就任し、朴正煕記念館の建設を主導しました。2007年4月26日、脊椎骨折のため86歳で死去しました。

エピソード

ソウル大学校在学中の尹錫悦が、1980年5月8日に粛軍クーデター関連の模擬裁判で裁判長を務めた際、申鉉碻をクーデターの首魁と誤認し、死刑を宣告したというエピソードがあります。一方、実際の首謀者である全斗煥には無期懲役を宣告しました。

申鉉碻は、激動の時代を生き抜き、韓国社会の発展に大きく貢献した人物です。官僚、政治家、実業家として多岐にわたる分野で才能を発揮し、その功績は韓国の歴史に深く刻まれています。

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