町村組合

町村組合とは

町村組合とは、明治時代に施行された町村制の下で、複数の町村が共同で特定の事務を行うために設立された法人です。この制度は、地方自治法における「地方公共団体の組合」へと引き継がれ、現代の地方自治制度にも影響を与えています。

町村制における町村組合

町村制（明治21年法律第1号）において、町村組合は当初、第6章に規定され、設立できる場合が定められていました。

当初の設立要件
数町村が共同で事務を行う必要があり、監督官庁の許可を得た場合。
法律上の義務を果たす資力のない町村が、合併協議が整わず、またその状況から合併が不便な場合に、郡参事会の議決を得た場合。
解散には監督官庁の許可が必要とされていました。
改正後の設立要件
町村制改正法律（明治44年法律第69号）により、設立要件が以下のように改められました。
町村が事務の一部を共同処理するために、協議により府県知事の許可を得た場合。
町村に特別な必要がある場合に、協議により府県知事の許可を得た場合。
公益上必要である場合に、府県参事会の議決を経て内務大臣の許可を得た場合。

さらに、町村制中改正法律（昭和18年法律第81号）では、公益上の必要性がある場合、府県知事が勅令に基づき町村組合を設置できるとされました。また、勅命によって別の規定を設けることも可能とされました。

市制、郡制、府県制、都制における組合

町村制だけでなく、市制、郡制、府県制、都制においても、同様の組合制度が設けられました。

市制（市町村組合）
市制改正法律（明治44年法律第68号）により、町村が事務の一部を共同処理するために、府県知事の許可を得て市町村組合を設置できるとされました。公益上の必要性がある場合には、府県参事会の議決を経て内務大臣の許可が必要でした。
郡制（郡組合）
郡制改正法律（明治32年法律第65号）により、特定の事務を共同処理する必要がある場合に、府県参事会の議決を経て内務大臣の許可を得て郡組合を設置できるとされました。
府県制（府県組合）
府県制中改正法律（大正3年法律第35号）により、府県が事務の一部を共同処理するために、規約を定め内務大臣の許可を得て府県組合を設置できるとされました。
都制（都府県組合または都市町村組合）
都制（昭和18年法律第89号）により、都と府県、または都外の市町村が事務の一部を共同処理するために組織する組合が設けられました。設置には東京都制施行令（昭和18年勅令第509号）に基づく手続きが必要で、公益上の必要性がある場合には内務大臣が都議会や関係府県会の意見を聴き設置するとされました。

町村組合の実施例

町村組合は、全国各地で様々な形で実施されました。以下に、その具体的な例をいくつか示します。

北海道
浦河町外3ヶ村組合（浦河町・西舎村・杵臼村・荻伏村）
南富良野村・占冠村組合
弁辺村・虻田村組合

岩手県
大迫町外二箇所組合（大迫町・内川目村・外川目村）
雫石・西山・御明神組合村
岩泉・安家・有芸組合村
姉帯・田部組合村
玉山・藪川組合村
川井・門馬組合村

福島県
津島・葛尾組合村
飯曽・石橋組合村
新舘・大須組合村
猪苗代町外二ヶ村組合（猪苗代町・磐保村・磐瀬村）
北山・大塩・檜原組合村
姥堂・塩川組合村
山都・木幡・山郷・小川組合村
相川・朝倉・一ノ木・早稲谷組合村
柳津村外二ヶ村組合（柳津村・倉戸村・飯谷村）
塔寺村外四ヶ村組合（塔寺村・気多宮村・坂本村・新舘村・船杉村）
高寺村外二ヶ村組合（高寺村・束松村・片門村）
野沢村外二ヶ村組合（野沢村・正中村・芹草越村）
尾野本村外三ヶ村組合（尾野本村・登世島村・睦合村・下谷村）
群岡村外二ヶ村組合（群岡村・上野尻村・宝坂村）
尾岐・東尾岐組合村
中ノ川・東川組合村
高田・田川組合村
川口・本名組合村
横田・大滝組合村
新郷村外一ヶ村組合（新郷村・千咲村）
小梁・八幡・布沢組合村
長江・二川組合村
伊南・大川・檜枝岐組合村
氷玉岡・川路組合村
西川村外二ヶ村組合（西川村・原谷村・三谷村）
近津・山岡組合村
上小川・下小川組合村
田人・石住・貝泊・荷路夫組合村
永戸・箕輪組合村
沢渡・三阪組合村
滑津・吉子川組合村

埼玉県
共和組合村
金屋組合村
吾妻組合村
山口組合村
太田組合村
中島組合村
中条組合村
妻沼組合村
吉岡組合村
日勝組合村
深作村外3ヶ村組合
大谷村外6ヶ村組合
原市町外1ヶ村組合

千葉県
白井・谷清組合村
千代田村・豊四季組合村
田中村・十余二組合村
関・豊岡組合村

東京府
中神村外八ヶ村組合
中藤村外三ヶ村組合
高木村外五ヶ村組合
五日市町外四ヶ村組合
箱根ヶ崎村外三ヶ村組合
福生・熊川組合村
菅生村外四ヶ村組合

神奈川県
柿生村外一ヶ村組合
煤ヶ谷村外一ヶ村組合
鎌倉東西組合村
名倉・日連組合村
上中・山田組合村
早川・江ノ浦・石橋・米神・根府川組合村
真鶴村外2ヶ村組合
川西村外4ヶ村組合
中川・玄倉・世附組合村
青山・長竹組合村
中野・太井・又野・三ケ木村・根小屋組合村
富士見村・俣野村・長尾村組合
箱根駅外二ヶ村組合
小原町外一駅一ヶ村組合
吉野駅外二ヶ村組合

山梨県
本建・硯島組合村
勝沼・等々力組合村

長野県
和田村外4箇村組合
田立・山口組合村

岐阜県
池田村・本郷村組合

静岡県
東山・日坂組合村
原里・印野組合村
富岡・須山組合村
高根・須走組合村
足柄・菅沼組合村
久能・大谷組合村
北賤機・南賤機組合村
中泉町・梅原村組合

愛知県
上津具・下津具組合村
稲橋・武節組合村
布里・一色・只持・塩瀬・愛郷組合村
松平・豊栄組合村
清水町・杉村組合
室場村外三か村組合

三重県
雲林院村・河内村組合

奈良県
櫛羅村外七ヶ村組合
土庫・松塚組合村

和歌山県
豊原・三川組合村
九重・玉置口組合村

大阪府
枚岡南・池島組合村

兵庫県
阿那賀・伊加利組合村

鳥取県
大路村・三戸古村組合
登儀村・上舟村組合
志保美村・元塩見村組合
新宮村・高野村組合
浦富村・牧谷村組合
伊井田村・大江村組合
久長村・三保村組合
佐貫村・宇戸村組合
曳田村・五総村・明治村組合
八東村・小畑村組合
若桜村・赤松村組合
菅野村・池田村組合
上私都村・中私都村組合
用瀬村・社村組合
智頭村・富沢村組合
大内村・山郷村・虫井村組合
海徳村・蒲野部村組合
東郷村・福富村組合
砂見村・岩坪村組合
穏治村・明治村組合
宝木村・光元村組合
正条村・八束水村組合
東竹田村・西竹田村・源村組合
賀茂村・高勢村組合
鼎村・三徳村組合
小鹿村・神中村組合
東郷村・松崎村組合
久津賀村・泊村・三橋村組合
西志村・福米村・東志村組合
常盤村・瑞穂村組合
逢束村・市勢村・伊勢崎村組合
古布庄村・三本杉村組合
勝田村・保永村組合
東長田村・上長田村組合
古豊千村・八幡村・王子村組合
野上村・二部村組合
黒坂村・菅福村組合
印賀村・菅沢村組合
宮内村・霞村組合
石見村・福成村組合
渡村・安井村組合
真住村・根雨村組合
金岩村・溝口村・栄村組合
米原村・金沢村組合
日吉村・吉寿村組合

岡山県
神代村・東江原村組合
山村・下鴫村・上鴫村組合

長崎県
平戸町村組合
古部伊福組合村
戸町小ヶ倉組合村

熊本県
白石・並建・畠口組合村
銭塘・内田組合村
奥古閑・海路口組合村
沖新・中島・中原組合村
深田・木上組合村
五木村・四浦村組合

これらの例は、町村組合が、地方行政における広域連携の初期の形として重要な役割を果たしたことを示しています。町村組合は、現在の地方自治制度においても、一部事務組合などの形でその理念が受け継がれています。

参考文献

地方自治法
町村制
市制
郡制
府県制
都制

関連項目

町村制
市町村

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