畠山義元

畠山 義元

畠山義元（はたけやま よしもと）は、室町時代中期から後期にかけて能登国の守護を務めた武将です。能登畠山氏の当主として波乱に満ちた生涯を送りました。

家督継承と追放

義元は、先代の能登守護であった畠山義統の嫡男として生まれます。明応6年（1497年）に父が死去したことを受け、若くして能登畠山氏の家督を継承し、当主となりました。しかし、父義統のような強力な指導力や家中をまとめる統率力を十分に発揮することが難しかったと伝えられています。このため、家中には義元に対する不満が蓄積していきました。

家督を継いでわずか3年後の明応9年（1500年）、ついに事態は表面化します。当時の守護代であった遊佐統秀ら能登畠山氏の有力家臣団が、義元の統率力不足を理由に反乱を起こしました。彼らは義元の弟である畠山慶致を新たな当主として擁立し、義元を排除しようと図りました。この謀反に対し、義元は抗しきれず、本拠地である能登を追われ、越後国へと逃れることを余儀なくされました。

復帰への道と二元政治

越後へ逃れた義元ですが、能登国内情勢の変化が復帰の機会をもたらします。永正3年（1506年）、北陸地方で発生した大規模な一向一揆は能登にも波及し、国内を混乱させました。この混乱の中で、能登畠山氏内部でも義元を支持し、その復帰を望む動きが再び起こり始めます。

さらに、永正5年（1508年）には、室町幕府において大きな政変がありました。かつて追放されていた第10代将軍足利義稙が、大内義興の支援を受けて京へ戻り、将軍職に復帰したのです。義元は、この義稙と政治的に近い立場（親義稙派）であったため、将軍復権は義元陣営にとって追い風となりました。これらの状況を背景に、義元の復帰に向けた動きは勢いを増し、かつて義元を追放して当主となっていた弟の慶致は隠居を選択。これにより、義元は能登畠山氏の当主として再び国政を担うこととなりました。

当主復帰に際し、義元は弟慶致の嫡男である畠山義総を自身の養嗣子として迎え入れました。これは、血筋による継承を明確にしつつ、義元と若年の義総が共同で統治にあたる、いわゆる二元政治の体制を築くことで、家中の安定と円滑な政務遂行を目指したためと考えられます。

上洛、反乱鎮圧、そして最期

能登の当主として復帰した義元は、将軍に復帰した足利義稙への働きかけを強めます。京へ上洛し、将軍の側近として幕政に関与することで、能登畠山氏の権威を高め、国内での支配基盤を強化しようとしました。

しかし、能登国内では依然として不穏な動きが続いていました。永正10年（1513年）、能登の家臣団による大規模な反乱が再び発生しました。この知らせを受けた義元は、急ぎ京から能登へ帰国します。帰国後、義元は養嗣子として能登に残っていた畠山義総と協力し、連携して反乱勢力の鎮圧にあたりました。この鎮圧には成功し、能登畠山氏の権威を守ることができました。

波乱の生涯を送った義元でしたが、その治世は比較的短期間に終わりました。反乱鎮圧から2年後の永正12年（1515年）に死去しました。義元の死後、能登畠山氏の家督は、既に養子としていた甥の畠山義総が正式に継承しました。畠山義元は、家中の内紛によって追放されながらも、時勢に乗じて復帰を果たし、甥との協力体制を築いて国政にあたるなど、戦国時代の端緒における守護大名の苦悩と再起の軌跡を示す人物と言えます。

もう一度検索