畠山義真

畠山義真は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての激動の時代を生き抜き、江戸幕府において重要な地位を占めた旗本、それが畠山義真です。

能登畠山氏の流れを汲む畠山義春の三男として生を受けました。母は戦国時代の武将、長尾政景の娘にあたります。

戦乱の世にあって、その幼少期から数奇な経験を重ねています。まず、上杉景勝の養子として迎え入れられますが、天正11年（1583年）、わずか5歳にして時の権力者である豊臣秀吉の人質として京に送られることとなりました。京での数年間を過ごした後、天正15年（1587年）には越後へと帰還を果たしました。

その後、上杉家を出て、河内国に隠棲していた実父、畠山義春のもとへと移り住むことになります。これは、複雑な時代背景や上杉家内部の事情などが影響したと考えられます。

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いにおいて、父・義春は東軍に味方しました。戦後、兄である長員は、新たな家系である高家上杉家を興し、1490石の所領を与えられました。一方、義真は畠山姓に改めて復し、名実ともに能登畠山氏の血筋を受け継ぐこととなりました。

慶長6年（1601年）、初めて徳川家康に拝謁する機会を得ました。その後、慶長17年（1612年）閏10月15日には、従五位下長門守に叙任されています。

さらに、元和3年（1617年）5月26日には、大和国宇智郡内に1500石が加増され、以前からの所領と合わせて3120石余の領地を安堵する朱印状を拝領しました。

二代将軍である徳川秀忠の側近として、幕府の職制として新たに創設された高家衆の一員として重用されました。高家は主に朝廷との交渉や儀式典礼を司る役職であり、義真はその草創期において、江戸城で行われる重要な式典の形式や手順といった基礎を確立する上で大きな功績を残しました。

特に注目すべきは、上杉家との継続的な関係性です。景勝の孫で、わずか8歳で米沢藩主となった上杉綱勝の補佐役としても機能しました。幼い綱勝が江戸城へ登城する際には必ず同行し、後見的な立場から彼を支えました。

また、上杉氏に伝わる伝統的な軍法、特に上杉謙信以来のものが断絶する危機に瀕した際、米沢藩から派遣された益田政重に対し、その秘奥を伝授したことは、義真が武門の棟梁としての側面も持ち合わせていたことを示しています。これは、綱勝の早世や、次代の綱憲が養子であったといった、当時の上杉家の複雑な家督相続事情と関連しています。

軍法伝承の例としては、寛永10年（1633年）に、三次藩主である浅野長治に対し、『上杉流之軍配免許』のうち「九重巻号令幕之巻」を与えたことが記録に残っています。

長寿を全うした晩年には、万治2年（1659年）2月9日に致仕し、家督は次男の義里に譲りました。隠居後も京で過ごしたようで、延宝2年（1674年）9月28日に96歳の高齢で亡くなりました。その長い人生は、戦国末期から江戸前期という時代の大きな変遷と、自身の数奇な経験、そして幕府の要職での貢献によって彩られています。法名は紹閑と号し、河内国の安福寺に葬られています。

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