発見のモニュメント

発見のモニュメント（Padrão dos Descobrimentos）

発見のモニュメントは、ポルトガルの首都リスボン西部、テージョ川のほとりに威容を誇る記念碑です。正式名称をポルトガル語で「パドラオン・ドス・デスコブリメントス」といい、15世紀から17世紀にかけてのポルトガルによる大航海時代を記念して建てられました。

構造と歴史

このモニュメントは、高さ52メートルに及ぶコンクリート製の巨大な構造物です。そのデザインは、当時の航海の主役であったキャラベル船の船首の曲線を模しており、まさに大航海時代への船出を象徴しています。建築家コッティネッリ・テルモ氏と彫刻家レオポルド・デ・アルメイダ氏によって設計され、元々は1940年に開催されたポルトガル国際博覧会のシンボルとして建設されました。

当初の構造は比較的もろい素材で作られていましたが、エンリケ航海王子の没後500周年を記念し、1960年に恒久的なコンクリート製として再建されました。この記念碑は、当時のアントニオ・サラザール独裁政権下において、過去のポルトガル栄光時代へのロマン主義的な思想を強く反映したものと見なされています。

人物群像

モニュメントの最大の特徴は、船の形をした構造物の両側に配された、ポルトガルの歴史に名を刻む約30名もの人物たちの彫像です。これらの人物は、探検家、航海士だけでなく、芸術家、科学者、地図制作者、宣教師、王族など、多岐にわたる分野で大航海時代に貢献した人々が選ばれています。

先頭に立つのは、大航海時代の幕開けを主導したエンリケ航海王子です。彼は未来を見据えるように、テージョ川の河口方向を見つめています。その背後には、以下の著名な人物たちの像が東西に分かれて配置されています。

東側

アフォンソ5世（大航海時代の王）
ヴァスコ・ダ・ガマ（インド航路発見者）
アフォンソ・バルダイア（騎士）
ペドロ・アルヴァレス・カブラル（ブラジル「発見」者）
フェルナン・デ・マガリャンエス（フェルディナンド・マゼラン、世界一周航海者）
ニコラウ・コエーリョ（航海士）
ガスバール・コルテ・レアル（航海士）
マルティン・アフォンソ・デ・ソーザ（航海士）
ジョアン・バーロス（歴史家）
エステバ・デ・ガマ（船長）
バルトロメウ・ディアス（喜望峰経由インド洋到達）
ディオゴ・カン（コンゴ川到達）
アントニオ・デ・アブレウ（モルッカ諸島到達）
アフォンソ・デ・アルブケルケ（ポルトガル領インド副王）
フランシスコ・ザビエル（日本へのキリスト教伝道者）
クリストバウン・ダ・ガマ（航海士、騎士）

西側

フェルナンド聖王子（王族、エンリケ航海王子の弟）
ジョアン・ゴン・サルベス（騎士）
ジル・イアネス（航海士）
ペロ・デ・アレンケーレ（航海士）
ペドロ・ヌネス（15世紀の数学者）
ペロ・デ・エスコバール（航海士）
ジャコメ・デ・マイオルカ（天文学者）
ペロ・ダ・コヴィリャン（陸路でインドに到達した冒険家）
ゴメス・イアネス・デ・ズラーラ（作家）
ヌノ・ゴンサルヴェス（15世紀の画家）
ルイス・デ・カモンイス（詩人、『ウズ・ルジアダス』で航海者を讃えた）
フエレイ・エンリケ・カルヴァーリョ（神学者）
フェルナン・ゴンサロ・デ・カルヴァーリョ（神学者）
ドナ・フィリパ・デ・レンカストレ（王妃、エンリケ航海王子の母）
* ペドロ・デ・コインブラ（王族、エンリケ航海王子の兄）

これらの像は、当時のポルトガル社会全体が大航海の事業を支えていたことを物語っています。

内部施設と周辺

モニュメントの内部には、リスボンの歴史に関する展示スペースがあり、街の変遷を学ぶことができます。また、エレベーターを利用してモニュメントの頂上まで昇ることが可能です。頂上からは、テージョ川の雄大な流れや、リスボン市街、特にベレン地区の美しい景観を一望できます。ベレン地区には、大航海時代を象徴するユネスコ世界遺産のベレンの塔やジェロニモス修道院といった歴史的建造物があり、これらも同時に眺めることができます。

モニュメント正面の広場には、ポルトガルが「発見」した様々な土地への航路を示した巨大な世界地図が、美しい石畳のモザイクとして描かれています。この地図は1960年に南アフリカ共和国から寄贈されたものです。特筆すべき点として、日本列島の記述には、ポルトガル人が種子島に漂着した1543年ではなく、ポルトガル船が豊後に到達したとされる1541年が記されています。

発見のモニュメントは、ポルトガルの輝かしい歴史と、世界へと漕ぎ出した勇敢な人々を称える、感動的な記念碑です。ベレン地区を訪れる際には、その歴史的な意義と壮大なスケールを肌で感じてみてください。

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