白い竜 (ウェールズの伝承)

白い竜について

白い竜（しろいりゅう）は、アーサー王伝説などにおいて重要な役割を果たす存在であり、特にゲルマン民族の象徴としての位置づけがある。これに関連して、サクソン人やアングル人がローマ軍の軍旗に描かれたドラゴンを模倣し、時には自軍の旗として利用したことが挙げられる。白竜は、ローマ軍撤退後のブリテン島における権力の不在を背景に、サクソン人とブリトン人の間の争いを象徴する存在であり、赤い竜と対を成す形でこれらの民族の対立を表現している。

伝説の中のドラゴン

キャロル・ローズが著書『世界の怪物・神獣事典』で説明しているように、ウェールズの伝説に登場する2頭のドラゴンのうち、赤い竜は「Y Ddraig Goch」、白い竜は「Gwiber」と呼ばれています。『ブリトン人の歴史』では、この2匹のドラゴンは両方とも「ワーム」として言及されており、古代の表現としてのドラゴンのイメージが見える。

ウェールズ語の「gwiber」は現代では有毒なヘビを指しますが、かつては翼のある蛇、つまりワイバーンを意味していたこともある。

起源の物語

ブリテンの大君主ヴォーティガンがサクソン人傭兵の反乱を受けてウェールズへ退却し、その後、魔術師たちの助言を受けて堅固な塔を建設しようとした物語が、白い竜にまつわる伝説を形成する背景となります。彼は塔の基礎が一夜のうちに地中に沈む事態に直面し、魔術師たちから特別な少年の血を土に加えるよう提案されます。少年マーリンが選ばれ、彼の助けにより、基礎の下に存在する水たまりが発見されることになります。

マーリンは、塔の基礎が沈んでいる根本的原因を明らかにし、その次に登場した赤い竜と白い竜の戦いを示しました。互いに認識したドラゴンたちは闘争を始め、ここで赤い竜が勝利を収める場面が展開されます。

マーリンは赤い竜をブリトン人、白い竜をサクソン人の象徴とし、この争いの終わりをコーンウォールの猪が白い竜を倒すことで成就されると予言しました。この予言は後にアーサー王の勝利により実現します。

文献と歴史的背景

この物語は、モンマスのジェフリーによる『ブリタニア列王史』に描かれており、そこから後の文化における伝説として長く語られています。ただし、ジェフリーの話の多くは後の脚色であることが指摘されており、実際にはそれより前に編纂された『ブリトン人の歴史』にも類似のエピソードがあります。異なる名で語られる仲間たちとの話は、時代を経て多様に変化しているのです。

白い竜と赤い竜の戦いは、ブリテン島における民族の形成と対立の象徴ともなり、耽美的な伝説として、現在でも人々の心に根付いています。

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