白上佑吉

白上佑吉：内務官僚、県知事としての生涯と汚職事件

白上佑吉（しらかみ ゆうきち）は、1884年（明治17年）12月19日に生まれ、1965年（昭和40年）1月24日に没した、日本の内務官僚、警察官僚、そして官選県知事です。旧姓は林で、陸軍大臣や首相を務めた林銑十郎は実兄にあたります。

生い立ちと官僚への道

白上佑吉は、石川県士族の林孜々郎の三男として、富山県で生まれました。その後、父の郡長であった白上俊一の養子となり、白上姓を名乗るようになります。第四高等学校を経て、1910年（明治43年）に東京帝国大学法科大学政治学科を卒業。同年11月には文官高等試験行政科試験に合格し、内務省に入省しました。警視庁警部としてキャリアをスタートさせ、警視総監官房文書課審査係長や高等課外事係長を歴任するなど、警察官僚としての道を歩み始めました。

警察官僚としての活躍

警視庁では、新橋警察署長、日比谷警察署長、麹町日比谷警察署長などを歴任し、その後、京都府警視、長野県理事官、富山県警察部長と、地方での警察行政にも携わりました。また、朝鮮総督府高等警察課長や欧米各国への出張も経験し、国際的な視野も培いました。帰国後は、京畿道警察部長、千葉県内務部長、警視庁官房主事、内務書記官・警保局保安課長、兼内務監察官など、内務省の中枢で重要な役職を歴任しました。

県知事としての手腕

1924年（大正13年）10月には、鳥取県知事に就任。政府の方針に従い緊縮財政を実施する一方で、教育振興、産業振興、土木事業にも注力しました。1926年（大正15年）9月には富山県知事に転任し、電力開発の推進、射水中学校・氷見中学校の開設などに尽力。売薬の海外進出やブラジルへの移民政策も実現させました。しかし、1927年（昭和2年）5月17日に島根県知事に転任を命じられると、「地方官は政府の使用人でも政党の雇い人でもない。富山県に対する愛県の至情を無視するような異動には応ぜられぬ」と異議を唱え、翌日18日に依願免本官となりました。その行動は、地方官としての信念を示すものとして注目されました。

文部官僚、そして東京市助役時代

1927年（昭和2年）8月には文部省実業学務局長に就任し、1928年（昭和3年）6月まで務めました。その後、1929年（昭和4年）4月から1931年（昭和6年）7月まで東京市助役を務めます。しかし、東京市助役在任中に東京瓦斯増資問題で賄賂を受け取った疑いが浮上し、裁判にかけられることになります。

汚職事件と晩年

1934年（昭和9年）4月に東京地方裁判所で有罪（懲役10ヶ月）判決を受け、その後、大審院で上告が棄却され、懲役6ヶ月の有罪判決が確定しました。これにより、従四位を失位し、勲三等、大礼記念章（大正/昭和）、帝都復興記念章を剥奪されました。戦後、1951年（昭和26年）8月まで公職追放の処分を受けましたが、その後、恵比寿食糧運送会社会長を務めました。墓所は渋谷区千駄ヶ谷の瑞円寺にあります。

親族

兄：林銑十郎（陸軍大臣、首相）
妻：夫佐（千葉県士族、匝瑳郡郡長の宮村豊の長女）
息子：白上謙一（生物学者）
息子：白上英三（一空軒）（武術研究者）
息子：盛次（東京府人山口コトの養子となる）
長女：善子
* 次女：千鶴子

白上佑吉は、内務官僚として、また県知事として、その手腕を発揮しましたが、晩年には汚職事件によってその名に傷がつきました。しかし、その波乱に満ちた人生は、日本の近代史における一側面を物語るものとして、記憶されるべきでしょう。

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