白山 (文京区)

白山：歴史と文化が織りなす文京区の街

東京都文京区に位置する白山地域は、文教地区として知られる閑静な住宅街です。白山1丁目から5丁目までの区域は、西片、向丘、本駒込、千石、小石川、大塚といった地域に隣接し、学校や寺院が多く点在する落ち着いた雰囲気を持っています。地域の中心となるのは、都営地下鉄三田線白山駅周辺の商業地です。駅周辺には、薬師坂と呼ばれる坂道があり、その頂上付近を白山上、坂の入口付近を白山下、そして白山下から白山上へと続く道を白山御殿町と呼ぶなど、歴史を感じさせる地名も残されています。

白山の歴史：神社から発展した街

白山という地名は、地域に鎮座する白山神社に由来しています。縁起によると、948年（天暦2年）に、加賀一ノ宮の白山神社から分霊を勧請して祀られたのが始まりと伝えられています。徳川綱吉公も信仰していたとされ、その歴史は古く、地域の人々の生活に深く根付いています。江戸時代までは、武蔵国豊島郡小石川村と駒込村の一部でしたが、明治時代以降、小石川区、本郷区を経て、1947年に文京区の一部となりました。現在の白山1～5丁目の区域は、1967年に行われた住居表示変更により、それまで存在した丸山新町、指ヶ谷町、戸崎町、白山御殿町、白山前町、原町などの町名が統合されて成立しました。

白山の文化：文学作品にも登場する街

白山は、歴史と共に幾多の文化を育んできました。1丁目の円乗寺には、有名な八百屋お七（妙栄禅定尼）の墓があり、門前にはお七延命地蔵尊が祀られています。2丁目の白山通り沿いは、明治時代には銘酒屋街として栄え、白山通りの西側低湿地帯（現在の白山1丁目の一部）は、大正から昭和初期にかけて白山花街として発展しました。この白山花街は、当時の盛り場として知られ、樋口一葉の小説『にごりえ』や徳田秋声の小説『縮図』の舞台にもなっています。関東大震災後には、小石川区に多くの印刷工場が移転し、労働者人口が増加しました。その結果、昭和初期の白山御殿町には、東京市最大の不良住宅地区が形成され、徳永直の小説『太陽のない街』の舞台にもなっています。5丁目の白山神社は、加賀国白山比咩神社の分霊を祀る古社で、元々は3丁目にありましたが、1655年（明暦元年）に白山御殿の造営に伴い現在地に移転しました。また、本念寺には江戸後期の文人・大田南畝（蜀山人）の墓があります。

白山の自然：小石川植物園

白山地域には、小石川植物園という貴重な自然も存在します。5代将軍徳川綱吉が館林藩主だった頃の下屋敷跡地に位置し、1719年（享保4年）に雑司ヶ谷薬園が移転したことが始まりです。青木昆陽による甘藷（サツマイモ）の試作や、庶民のための養生所の運営など、歴史的な出来事が数多く残されています。園内には甘藷先生の記念碑や療生所の井戸が残っており、歴史を感じることができます。1877年（明治10年）には養生所が東京医学校（東大医学部の前身）となり、後に東大付属の植物園となりました。

白山の現在：教育機関や商業施設も充実

現在、白山地域は、多くの学校や商業施設が充実した、住みやすい街として発展しています。東洋大学白山キャンパスや京華中学校・高等学校などの教育機関、そして小石川植物園や白山公園などの緑豊かな空間も存在します。また、文京区立指ケ谷小学校、白山保育園、愛星幼稚園などの教育施設も整備されています。さらに、多数の寺院や、白山神社、浅間神社などの神社も地域に溶け込み、人々の生活に彩りを添えています。地価は近年も安定しており、文京区の中でも人気の高いエリアとなっています。

まとめ

白山は、歴史と文化、そして自然が調和した魅力的な地域です。古くからの歴史と近年の発展が融合し、落ち着いた雰囲気と利便性を兼ね備えた街として、多くの人々に愛されています。白山神社をはじめとする歴史的な建造物、小石川植物園といった自然、そして数多くの学校や商業施設など、見どころは尽きません。

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