白彦虎

白彦虎：回民蜂起を率いた悲劇の英雄

白彦虎（はく げんこ、Bái Yànhǔ、ドンガン語：Бай Яньху、1830年2月8日 - 1882年7月26日）は、19世紀に中国で発生した回民蜂起の主要な指導者の一人です。彼は、同治年間（1862年 - 1874年）に清朝に対する反乱を主導し、その激動の生涯は、回民（ムスリム）の苦難と抵抗の歴史を象徴しています。中央アジアのドンガン人からは「民族の父」と尊ばれており、その名は今もなお、彼らの間で語り継がれています。

生い立ちと回民蜂起の背景

白彦虎は、陝西省西安府涇陽県の貧しい農村に生まれました。当時の清朝は、太平天国の乱や捻軍の蜂起などで財政が逼迫しており、各地で重税が課せられていました。特に、陝西省や甘粛省といった貧しい地域では、その負担は大きく、官吏の腐敗も相まって、民衆の不満は高まっていました。回民に対する差別や侮蔑も深刻で、これが大規模な蜂起へと繋がります。

回民蜂起の勃発と白彦虎の台頭

1862年、陝西省で回民蜂起が勃発すると、白彦虎はアホン（イスラム教の指導者）として立ち上がり、指導者の一人として頭角を現します。彼は、他の回民指導者とともに、西安を包囲し、清朝の欽差大臣勝保率いる軍を破るという大きな戦果を上げました。しかし、後任の欽差大臣ドロンガ（多隆阿）に敗れ、鳳翔へと逃れることになります。

その後、陝西回民軍は藍朝柱と連合し、ドロンガに対抗しましたが、1864年には甘粛省寧州の董志塬に拠点を移し、「十八大営」を組織します。白彦虎は、この十八大営において元帥の一人に選ばれ、回民軍の重要な指導者としての地位を確立しました。陝西回民軍は、捻軍の張宗禹と連携し、清朝に対抗しましたが、1868年には、十八大営は四大営に再編され、董志塬から撤退することになります。

西寧での敗北と中央アジアへの逃避

白彦虎は、金積堡に拠る馬化龍の回民軍を救援しようとしますが、失敗に終わります。その後、西寧に逃れ、馬桂源・馬本源兄弟と連合して清軍と戦いましたが、1872年に敗北を喫します。西寧での敗北後、白彦虎は河西回廊を転戦し、最終的にカシュガルのヤクブ・ベクのもとに逃れました。しかし、1877年に、欽差大臣左宗棠の大軍がヤクブ・ベクを滅ぼすと、白彦虎は5千人の兵とともにロシア領へと逃れます。

晩年と死

ロシアに逃れた白彦虎は、再起を図ろうとしますが、故郷の陝西に戻ることはありませんでした。1882年、ビシュケクで肺炎のため、42歳という若さで生涯を閉じました。

白彦虎の生涯は、19世紀の中国における動乱の時代を象徴しており、回民の人々にとっては、今もなお、その抵抗の象徴として記憶されています。

関連事項

ヤクブ・ベクの乱
ドンガン人
* ドンガン語

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