白石顕二

白石 顕二（しらいし けんじ）

1946年生まれ、2005年6月22日没。日本のアフリカ文化研究者として知られる。特に、映画、音楽、美術といった多様な芸術分野を中心に、アフリカの豊かな文化を日本に紹介することに生涯を捧げた。

茨城県に生まれ、東京都立大学法学部を卒業。法律の分野から文化研究へと歩みを進めた白石氏は、多角的な視点からアフリカ文化の本質を探求した。

アフリカ文化の伝播者として

白石氏の活動は、国内外にわたる広範なフィールドワークに基づいていた。アフリカ各地で開催される主要な映画祭、例えばワガドゥグ全アフリカ映画祭（FESPACO）、カルタゴ映画祭、カイロ国際映画祭などを積極的に取材し、現地の息吹を日本に伝えた。

また、日本の観客にアフリカ映画を紹介するため、東京アフリカ映画祭の運営に深く関与。多くの著名なアフリカの映画作家や関係者を日本に招き、直接的な交流の機会を創出したことは、日本の映画界におけるアフリカ理解を深める上で極めて重要であった。

音楽分野においても、その造詣は深かった。西アフリカの伝統的な語り部であるグリオの音楽から、エジプトのターアラブ、ジンバブエのムビラ音楽、さらにはジャズやレゲエといった現代音楽に至るまで、幅広いジャンルを論じた。マヌ・ディバンゴ、パパ・ウェンバ、サリフ・ケイタ、トーマス・マプフーモ、ミリアム・マケバといった国際的に活躍する著名なアフリカ人ミュージシャンたちの紹介にも力を入れ、その音楽が持つ多様性と力強さを日本の聴衆に伝えた。

美術においては、タンザニアのジョージ・リランガやジャファリー・アウシといった現代アフリカを代表するアーティストたちの作品に光を当て、彼らの創造性豊かな世界を紹介した。これらの活動を通じて、白石氏はアフリカの現代芸術が持つ生命力とユニークネスを日本に届けた。

著作とメディアを通じた啓発

白石氏の知識と経験は、多数の著作や翻訳として結実している。これらの書籍は、日本におけるアフリカ研究の重要な資料となっている。

主な著書

『ザンジバルの娘子軍（からゆきさん）』 冬樹社、1981年 / 社会思想社〈現代教養文庫〉、1995年
『アフリカ音楽の想像力』 勁草書房、1993年
『アフリカ映画紀行』 柘植書房新社、2000年（信濃毎日新聞連載コラムを再構成）
『アフリカルチャー最前線』 柘植書房新社、2006年

主な共著・共編

白石顕二・山本富美子編 『ティンガティンガ アフリカン・ポップアートの世界』 講談社、1990年
白石顕二・山本富美子編 『ジャファリーのアフリカ』 講談社、1992年
白石顕二・山本富美子編 『アフリカ・フォイ リランガの宇宙』 講談社、1993年

主な訳書

アレックス・カリニコス、ジョン・ロジャーズ著 『南部アフリカの階級闘争』 柘植書房、1980年
アミルカル・カブラル著 『アフリカ革命と文化』 亜紀書房、1980年
シネマクシオン編 『ブラック・アフリカの映画』 彩流社、1987年

また、NHK-BSの『エンターテイメントニュース』でレポーターを務めるなど、テレビ番組への出演も通じて、より広い層にアフリカ文化の魅力を伝えた（1988年 - 1994年）。

逝去

2005年6月22日、急性心筋梗塞により59歳で死去。その突然の死は、日本のアフリカ文化研究・紹介活動にとって大きな損失となった。白石顕二氏の残した功績は、今日の日本におけるアフリカ理解の基盤の一つとなっている。

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