百地三太夫

百地三太夫

百地三太夫（ももち さんだゆう）は、江戸時代の読本などを通して語り継がれる人物であり、武士、あるいは忍者として描かれています。彼は、伝説的な盗賊、石川五右衛門に忍術を教えた師として知られています。

概要

百地三太夫が文献に初めて登場したのは、石川五右衛門を主題とした実録本『賊禁秘誠談』です。彼の略歴は、伊賀国山田郡喰代（現在の三重県伊賀市喰代）に存在したとされる武士・百地氏の「樒塚」の伝承から取材されており、五右衛門をその伝承に組み込む形で物語が構成されています。

物語における百地三太夫は、安土桃山時代頃の人物として描かれています。孤児であった五右衛門に忍術を教えましたが、後に五右衛門が悪心を抱き、三太夫の愛妾と妻を殺害し、大金を奪って逃亡するという悲劇に見舞われます。この設定は、『絵本太閤記』をはじめとする石川五右衛門を題材とした作品に広く浸透し、大正時代の立川文庫では、さらに霧隠才蔵の師匠であるという設定が加えられました。

今日では、百地三太夫はしばしば天正伊賀の乱で織田氏と戦ったとされる百地丹波と同一人物として扱われることがあります。しかし、前述のように、三太夫は物語に登場する架空の人物であり、同時代の史料や軍記物、百地氏の系譜資料などには登場しません。したがって、百地三太夫と百地丹波を同一人物とする根拠は存在しません。

百地三太夫が登場する作品

『忍びの者』（1960年 - 1962年）
『忍者武芸帖 百地三太夫』(1980年)
『風が如く』（2008年 - 2010年）
『石川五右衛門』（2016年）

参考文献

足立巻一『忍術』平凡社〈へいぼん・ぶっくす〉、1957年。
平松令三 編『三重県の地名』平凡社〈日本歴史地名大系〉、1983年。ISBN 978-4-582-91039-1。
* 上田正昭; 西澤潤一; 平山郁夫 ほか 編『日本人名大辞典』講談社、2001年。ISBN 978-4-06-210800-3。

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