盛久寺 (恵那市)

盛久寺の概要

盛久寺は、岐阜県恵那市山岡町馬場山田に位置する曹洞宗の寺院です。東巌山という山号を持ち、本尊として如意輪観音を祀っています。この寺は、戦国時代の終わりに、諸国を巡っていた僧侶、石室善玖がこの地の穏やかな風景を気に入り、白雲庵を結んだことに始まります。

歴史

当時、恵那郡の寺社は、武田勝頼の東濃侵攻による戦火でほとんどが焼失していました。そのため、人々は仏教の教えを受けるために岩村盛巌寺の體巌雲恕を頼るしかありませんでした。このような状況の中、白雲庵の麓に住んでいた豪農、後藤新右エ門は、地域に寺がないことを嘆き、寺の建立を願っていました。後藤新右エ門は、石室善玖を開山として白雲庵を寺にするように働きかけました。石室善玖は、師である體巌雲恕に開山を依頼し、三者の協力によって慶長2年（1597年）に白雲庵は東巌山盛久寺となりました。

初代住職：體巌雲恕

初代住職である體巌雲恕は、尾張の清洲出身で、高僧として知られていました。岩村藩主の松平乗寿に請われ、盛巌寺の住職を務めていました。彼はまた、大井の長國寺も開山しています。

二世住職：石室善玖

二世住職である石室善玖は、盛久寺の実質的な開山者です。彼は、寛永初年に下手向村に普門寺を開山しました。

三世住職：龍山長雲

三世住職の龍山長雲は、寛永2年（1625年）に久保原村に林昌寺を開山しました。

四世住職：白峯林太

四世住職の白峯林太は、寛永10年（1633年）に土岐郡鶴里村細野に福昌寺を開山しました。さらに、寛永16年（1639年）には、同じく鶴里村細野に正宗寺を開山しています。また、三河国設楽郡武節村に龍光院を開山しました。

六世住職：快信祖慶

六世住職の快信祖慶は、山田村和田の出身です。彼は、寺の堂宇の老朽化を憂い、修復と再建に尽力しました。大殿の修理、庫裡の移転、衆寮や山門の建築などを行い、貞享4年（1687年）には梵鐘を鋳造しました。この梵鐘は、名古屋の水野庄左エ門によって作られ、周囲7尺2寸、直径2尺3寸8分、厚さ2寸3分という大きさでした。

七世住職：雪原岩亮

七世住職の雪原岩亮は、上手向村の西尾氏の出身で、名僧として知られていました。岩村藩主の丹羽式部は彼を岩村城に招いて禅の教えを聞き、黄金の聖観音を献じたと伝えられています。彼はまた、土岐郡の曽木村に仏徳寺を開山しました。

八世住職：智唐亮禅

八世住職の智唐亮禅は、飯羽間村の出身です。享保13年（1728年）に後藤喜右エ門の協力を得て、大殿の再建を行い、衆寮、山門、長屋なども建て直しました。

十二世住職：自回厳道

十二世住職の自回厳道は、天明4年（1784年）に庫裡を造り、寛政6年（1794年）には衆寮禅堂を立て直しました。また、土地の購入も行い、寺の発展に大きく貢献しました。彼は、久保原村の林昌寺を平僧地から法地に昇格させ、自身が法地一世となりました。また、土岐郡細野村に福昌寺を開山しました。自回厳道の時代には、寺は田畑27石余、山林9か所、藪1か所を所有し、大殿をはじめとする多くの建物が整備されていました。

十五世住職：聯燈禅芳

十五世住職の聯燈禅芳は、土岐郡細野村に正宗寺を開きました。

十七世住職：堆慎獨光

十七世住職の堆慎獨光は、林昌寺七世から盛久寺に入りました。明治31年（1898年）には摂津の能勢妙見堂から妙見菩薩を勧請し、明治34年（1901年）には縮刷一切蔵経を購入しました。

臥龍梅

境内には、盛久寺を開山した體巌雲恕が植えた樹齢400年を超える梅の木があります。その姿から臥龍梅と呼ばれており、中国から渡来した丹犀種という八重咲きの紅梅です。明治初年に仏教学者の大内青巒が盛久寺を訪れた際、臥龍梅の美しさを称えた五言絶句の掛軸が残されています。平成7年（1995年）には、損傷が激しくなったため、造園樹木医の村上助九郎によって保護が行われました。

伝説

盛久寺は、元は釜井の高台西端にあったという伝説がありますが、火災によって現在地に移転したとされています。しかし、釜井にあった寺は釜井館の領主の菩提寺であり、館と共に戦火で滅亡したため、盛久寺とは直接的な関係はないとされています。

本寺と末寺

盛久寺は、盛巌寺の末寺でありながら、6つの寺院を開き、武儀郡下有知村の龍泰寺の配下となりました。盛久寺の末寺は以下の通りです。

林昌寺（岐阜県恵那市山岡町久保原）
普門寺（岐阜県恵那市山岡町下手向）
正宗寺（岐阜県土岐市細野）
福昌寺（岐阜県土岐市細野）
仏徳寺（岐阜県土岐市曽木）
龍光院（愛知県豊田市桑原町）

参考文献

『山岡町史 通史編』 第九章 宗教 第三節 禅宗寺院 盛久寺 p630～p633 山岡町誌編纂委員会 1989年
『山岡町史　史料編　下巻』　第九　寺社関係　四〇九　盛久寺由来記　p615～p620　山岡町史編纂委員会　昭和53年
『恵那郡史』第六篇 戦国時代 第二十六章 禅宗の興隆【曹洞宗】 p200～p202　恵那郡教育会 1926年
『恵那郡史』第八篇 現代 第四十一章 人文の発展(一)【各宗寺院】 p612～p619　恵那郡教育会 1926年

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