盛巌寺 (西尾市)

盛巌寺（せいがんじ）

盛巌寺は、愛知県西尾市馬場町に位置する曹洞宗の寺院です。久昌山と号し、大給松平家（宗家）の菩提寺として、その歴史を刻んできました。

歴史

上州における創建

盛巌寺の歴史は、天正18年（1590年）に、大給松平家の松平家乗によって上州那波に創建されたことに始まります。家乗は父祖の供養のため、当時江戸浅草にあった総泉寺の八世、雄山傳英を開山として招き、寺に15石を寄進しました。大給松平家には元々浄土宗の龍巌寺（龍岩寺）という菩提寺がありましたが、家乗は曹洞宗にも帰依し、先祖の冥福を祈るため盛巌寺を創建したのです。寺号と山号は、家乗の父である松平真乗の法号「梅香院殿盛巌道翁大禅定門」と、祖父である松平親乗の戒名「空源院殿久浄昌大居士」にちなんで名付けられました。

慶長2年（1597年）、雄山傳英が上州那波で亡くなると、玄室慈頓が二世となりました。

岩村への移転

慶長6年（1601年）、松平家乗が美濃の岩村藩主となると、盛巌寺と龍巌寺（龍岩寺）も岩村城下に移されました。玄室慈頓は、上州那波から移って間もなく岩村で亡くなり、恵那郡大井村の長国寺から體巌雲恕を招いて三世としました。これが體巌派の始まりです。家乗は盛巌寺に恵那郡阿木村の30石を寺領として与えました。その後、玄室慈頓の弟子の乾中元貞が四世となり、通元派を形成しました。

寛永15年（1638年）、大給松平家は二代藩主の松平乗寿の時代に浜松藩へ転封となりました。この時、岩村の盛巌寺には十五人扶持が残され、乾中元貞は三人扶持（後に五人扶持）を与えられて浜松に新しく開創された盛巌寺に移り、大給松平家歴代の位牌を携えていきました。これにより、「一山 両 盛巌寺と成」という状態となり、岩村の盛巌寺はそのまま残りました。そのため、岐阜県恵那市岩村町にも盛巌寺が存在します。

その後、大給松平氏（宗家）は、館林藩、唐津藩、鳥羽藩、亀山藩、淀藩、佐倉藩、山形藩と転封を繰り返したため、盛巌寺と龍巌寺（龍岩寺）もその都度移転することになりました。

西尾における創建

明和元年（1764年）、大給松平家は山形藩から三河の西尾藩に移封となり、盛巌寺も西尾に移されました。しかし、最初の7年間は在家で過ごすこととなります。明和7年（1771年）の夏に、「旦家助力を借りず五間七間半の寺造立」が行われ、安永2年（1773年）には、癸巳大旦君の命により、寺領名目として百石の格式となりました。

大給松平氏（宗家）の七代乗寿の墓は館林の善道寺にありますが、八代乗久、九代乗春、十代乗邑、十一代乗佑、十二代乗完、十三代乗寛の墓は江戸の天徳寺にあります。

弘化3年（1846年）の「西尾藩分限帳写」には、両寺について以下のように記されています。

五人扶持 盛巌寺 龍岩寺無院の内 毎月兼帯供養米二俵 正五九月 大般若転読料六俵
高百石 竜岩院 当寺無住につき高 相渡さず

龍巌寺（龍岩寺）は、山形藩時代に既に無住となっていたため、大給松平家（宗家）歴代の位牌は、盛巌寺十一世の泰逢が、同じく無住であった山形における大給松平家（宗家）の祈願所である真言宗の吉祥院の聖天不動とともに西尾に移しました。しかし、堂宇の建立は遂に実現しませんでした。

そのため、盛巌寺が大給松平家（宗家）の菩提寺としての役割を担うこととなり、明治3年（1870年）に西尾城で亡くなった十四代の松平乗全（源恭院殿）の墓は盛巌寺に葬られました。

境内

盛巌寺の境内には、以下の施設があります。

本堂 - 内部には大給松平家（宗家）の歴代の霊室があります。
山門
「梅庭高橋君碑」 - 1883年（明治16年）に建立された高橋瑞子の顕彰碑です。

関連寺院

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参考文献

西尾市史編纂委員会「三 在地勢力と宗教 （一）禅宗寺院の創建 盛巌寺と大給松平氏」『西尾市史 2 （古代・中世・近世 上）』西尾市、1974年、pp.299-302
岩村町史刊行委員会「十八 江戸時代の宗教 3 寺院 盛厳寺」『岩村町史』岩村町、1961年、 pp.312-314

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