相伴衆

室町幕府の重鎮集団：相伴衆

室町幕府において、将軍の側近として特別な地位を占めていたのが「相伴衆」です。将軍の宴席や外出に随行する役割を担い、その構成員は幕府内でも高い権威と格式を誇っていました。相伴衆は単なる従者ではなく、一種の身分階級として幕府の職制に組み込まれ、管領に次ぐ地位を有していたとされています。ただし、三管領家は相伴衆の中でも特に高い地位にあったとする見解もあります。

相伴衆の成立と主要メンバー

将軍の外出に守護大名が随行する慣習は足利義満の時代から存在しましたが、相伴衆が正式な役職・身分として確立されたのは、足利義教の永享年間（1430～1441年）と推定されています。初期の相伴衆は、主に以下の七家から構成されていました。

山名氏: 但馬、備後、安芸の国守護。侍所所司を務める四職家の一つ。
一色氏: 丹後、伊勢、三河の国守護。侍所所司を務める四職家の一つ。
畠山氏: 能登の国守護。
細川氏 (讃州家): 阿波の国守護。
赤松氏: 播磨、備前、美作の国守護。侍所所司を務める四職家の一つ。
京極氏: 出雲、隠岐、飛騨の国守護。侍所所司を務める四職家の一つ。
* 大内氏: 周防、長門、豊前、筑前の国守護。

『宗五大草紙』などの文献をみると、赤松氏、京極氏、大内氏は相伴衆の中でも下位に位置づけられていたとされています。また、応仁の乱後（15世紀末）には、土岐氏（美濃の国守護）が相伴衆に加えられたとする説もあります。室町時代において、国持衆から相伴衆に昇格することは非常に困難であり、足利義澄が若狭武田氏を相伴衆に引き上げようとした際にも、管領細川政元から激しい抵抗を受けました。結局、相伴衆への昇格は取りやめとなり、武田元信が従四位に叙爵されることで妥協が成立しています。

戦国時代における相伴衆の変化

戦国時代に入ると、相伴衆の性格は大きく変化しました。朝倉孝景、北条氏康、北条氏政、尼子晴久など、将軍に直接仕えることなく地方で勢力を築いた戦国大名も相伴衆に任じられるようになり、役職としての意味合いは薄れ、大名の格式を示す名誉称号としての側面が強まりました。一方で、武田信虎のように、故郷を追われた大名が相伴衆に任じられるケースもありました。また、細川氏の家臣であった三好長慶は、足利義輝から相伴衆に任じられ、その権威を用いて幕政の実権を握るに至りました。三好義興も同様に相伴衆に任じられています。

さらに、将軍家に近い公家が相伴衆に任じられる例も見られました。永正の錯乱の際には、足利義澄に従って京都を脱出した日野高光、出家隠遁した冷泉為広、今川氏に逃れた正親町三条実望などが、義澄の相伴衆であったとされています。

室町時代特有の職制であった相伴衆ですが、戦国時代から江戸時代初期には、将軍（あるいは大名）に仕える類似の役職として「御伽衆」が存在し、しばしば相伴衆と呼ばれました。

相伴衆は、室町幕府の政治構造や権力関係を理解する上で重要な存在であり、その歴史的変遷をたどることで、室町時代から戦国時代への移行過程を深く考察することができます。

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