真田幸村の謀略

『真田幸村の謀略』

1979年9月1日に公開された東映製作・配給の日本映画。東映が総力を結集した「大型時代劇シリーズ」の第三弾として、『柳生一族の陰謀』、『赤穂城断絶』に続いて製作された作品である。

舞台は戦国の終焉、大坂の陣。真田幸村と配下の精鋭「真田十勇士」が、天下統一を目前にした徳川家康の命を狙う壮大な物語が展開する。特に、奇想天外な忍術戦や超常的な現象の描写には、当時の最先端特撮技術が惜しみなく投入されている点が大きな特徴だ。

製作背景

本作の製作には、企画に2年、脚本に1年余り、そして実際の製作に約2年と、実に5年以上の歳月が費やされた。総製作費は8億円に上り、エキストラ延べ4,000人、馬500頭、鎧700着が用意されるなど、その規模の大きさがうかがえる。これは、前作『赤穂城断絶』の興行成績が振るわなかったことを受け、東映社長（当時）の岡田茂氏が、大型時代劇シリーズの存続を懸けて本作に臨んだためである。

脚本の変遷

脚本作りにおいては、かつて中村錦之助（後の萬屋錦之介）主演でヒットした『真田風雲録』が、隕石落下から始まる奇抜な導入を持っていたことから、本作でもより斬新な趣向を取り入れようとする機運があった。当初は松本功氏がアクションを、田中陽造氏が十勇士やドラマ部分を担当し、「犬伏の別れ」に焦点を当てる構想もあったが、まとまりを欠き難航した。

代わって脚本チームの中心となった笠原和夫氏は、劇場公開時のパンフレットで、独自の「新・十勇士」構想を明かしている。それは、十勇士を「『影』の民衆の代表」として位置づけるというものだった。この構想に基づき、十勇士の面々にはユニークな背景が設定された。海野六郎、望月六郎、筧十蔵、由利鎌之助は関ヶ原で敗れた浪人、根津甚八は山窩、三好清海入道は朝鮮王族の姫ジュリアおたあ、三好伊三入道はその従者尹三英とされた。これに真田家家臣の霧隠才蔵、小者の息子穴山小助、そして正体不明（実は宇宙人という設定）の猿飛佐助が加わり、「新・十勇士」が形成された。しかし、このような設定を突き詰めるうちに、「ある種高貴でおかしなやつ、いわゆる悪党」として描かざるを得なくなった幸村像と、「草の者」から最も遠い存在である佐助（宇宙人）という設定の自己矛盾に、笠原氏自身が悩んだとも語られている。

キャスティングと撮影

シリーズ第三弾にして、主演には新たに松方弘樹氏が抜擢された。前二作で主演を務めた萬屋錦之介氏は、本作では徳川家康というラスボス的な悪役として出演している。

撮影においては、劇中に登場する真田丸の巨大セットが象徴的である。パンフレットによれば、長さ70メートル、高さ8メートルに及ぶこの出城は、延べ200人のスタッフが9日間かけて設営し、3000万円もの費用が投じられたという。

ストーリー概要

物語は、日本各地で目撃される巨大な隕石の飛来から始まる。関ヶ原の敗将である真田幸村は、紀州九度山に蟄居しながらも、父・昌幸と共に打倒家康の機を窺っていた。家康の暗殺を試みるも影武者に阻まれ、反撃を受ける霧隠才蔵は、不思議な忍術を使う猿飛佐助に救われる。

九度山では、昌幸が徳川方の策謀により毒殺される。家康はさらに豊臣秀頼の毒殺を図るが失敗し、対立する加藤清正をも虎による事故に見せかけて葬り去る。幸村は、兄・信幸の徳川方への誘いを撥ねつけ、佐助や望月千代女率いるくノ一軍団の協力を得て、諸国に散る草の者、忍び、浪人たちを集め、「真田十勇士」を結成する。

十勇士は家康の首を狙い、様々な奇策を実行する。駿府に囚われたジュリアおたあを救出し、彼女は断髪して三好清海入道として十勇士に加わる。和歌山藩での家康視察の際には、油井を利用した爆破装置で狙うが、これは幸村をおびき寄せる家康の計略であり失敗、幸村は片目を失う。

家康はこれを豊臣方の犯行と断定し、大坂冬の陣が開戦。幸村らは正式に豊臣方に仕え、出城・真田丸を築く。冬の陣では、幻覚を見せる「まやかしの草」の煙幕を使用するが、奮戦空しく豊臣方は和睦により事実上の敗退となる。

駿府に籠もった家康を諦めきれない幸村らは、侍女に変装した清海入道を用いて秀頼を煽り、再び合戦（大坂夏の陣）を引き起こさせる。夏の陣では、ニセの幸村の首を家康本陣に持ち込み欺く作戦を行う。しかし、多勢に無勢、大坂城は落城し、秀頼も自害する。

家康の帰還路、十勇士は赤い甲冑の幸村影武者となって次々と家康を襲撃、捨て身の自爆攻撃で護衛を削っていく。最後に、本物の幸村が一人となった家康の前に立ちはだかり、その首を討ち取る。家康の死は世の安定のため病死とされ長く秘匿された、というナレーションが挿入される。全ての結末を見届けた佐助は、呪文と共に巨大な隕石へと姿を変え、夜空に消えていくのだった。

主な登場人物と出演者

真田幸村：松方弘樹
猿飛佐助：あおい輝彦
筧十蔵：森田健作
三好清海入道＝ジュリアおたあ：秋野暢子
根津甚八：岡本富士太
霧隠才蔵：寺田農
穴山小助：火野正平
三好伊三入道＝尹三英：真田広之
由利鎌之助：岩尾正隆
海野六郎：ガッツ石松
望月六郎：野口貴史
真田昌幸：片岡千恵蔵（特別出演）
真田信幸：梅宮辰夫
真田綾（幸村の妻）：萩尾みどり
望月千代女：不明
豊臣秀頼：小倉一郎
淀の方（淀君）：高峰三枝子
徳川家康：萬屋錦之介
服部半蔵：曽根晴美
加藤清正：丹波哲郎
後藤又兵衛：成田三樹夫
林羅山：金子信雄

スタッフ

監督：中島貞夫
企画：高岩淡、日下部五朗、松平乗道、三村敬三
脚本：笠原和夫、松本功、田中陽造、中島貞夫
撮影：赤塚滋
音楽：佐藤勝
特殊撮影監督：矢島信男、佐川和夫
* 視覚効果：デン・フィルムエフェクト

テレビ放送

本作は、1982年4月29日にフジテレビ系列のゴールデンタイムでテレビ放送されたことがある。

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