矢向

矢向（やこう）について

矢向は、神奈川県横浜市鶴見区に位置する町名で、一丁目から六丁目までが存在します。かつて存在した矢向町についても、本稿で解説します。

地理

矢向は鶴見区の東北部に位置し、鶴見川の左岸に広がっています。川崎市との境界に近く、鶴見駅よりも川崎駅の方が距離的に近いという特徴があります。沖積層からなる平坦な土地で、海抜は2〜3メートルです。

周辺は、北西に江ケ崎町、西に鶴見川を挟んで上末吉・下末吉、南に元宮・尻手と隣接し、東側と北側は川崎市幸区に接しています。南部の国道1号沿いには工場や事業所が多く、その他は住宅地となっています。

南武線と品鶴線（横須賀線）が町内を縦断しており、特に品鶴線は新鶴見操車場の跡地を通っているため、東側の矢向一丁目とその他の地域の間は陸橋を通る必要があります。

16世紀末まで多摩川の河口は現在よりも南に位置しており、矢向は多摩川の河畔にありました。この事実は、地質的な旧河道や自然堤防の存在、そして最願寺の観音像が多摩川を漂流して「矢向の川岸」に流れ着いたという伝説からも裏付けられます。

大正時代には、鶴見川と多摩川に挟まれた肥沃な土地であったため、農地が広がっていました。しかし、現在では町内に農地は存在しません。

地価

2024年1月1日の公示地価によると、住宅地の地価は1平方メートルあたり、矢向1-16-17で27万円、矢向3-1-2で33万8000円、矢向5-11-27で34万7000円となっています。

歴史

平安時代頃までは、この地域は東京湾に浮かぶ浮洲の一つだったと考えられています。矢向で最も古い良忠寺が1240年に創建されたことから、その頃までには開拓が進み、農村が形成されていたと推測されます。古くは武蔵国橘樹郡に属していました。

江戸時代には川崎領矢向村と呼ばれ、天領、寺領、旗本領のいずれかに属していました。二ヶ領用水の開通後は、矢向村内にも水路が引かれ、農業に利用されました。

明治維新後、1868年には神奈川県に編入されたとされ、その後、地方制度改革により矢向村の行政区域は変遷を遂げました。

1873年：区画改正により4大区5番組に属する
1874年：大区小区制により4大区5小区に属する
1878年：郡区町村編制法により橘樹郡矢向村となる
1889年：町村制により周辺の村と合併し橘樹郡町田村となる（大字矢向）
1923年：町田村が町制を施行し潮田町となる
1925年：潮田町が橘樹郡鶴見町に編入
1927年：鶴見町が横浜市に編入、大字矢向は矢向町となる。鶴見区が発足

昭和に入ると、京浜工業地帯に多くの工場が建設され、それに伴い住宅地が拡大しました。1927年に南武鉄道が開業し、矢向駅と尻手駅を中心に住宅地が広がりました。

1945年の川崎・鶴見空襲では、矢向駅や隣接する矢向電車区が被害を受けました。現在矢向駅前に立つクスノキの大木は、空襲で焼失した記念樹が蘇生したものです。

戦後は京浜工業地帯の発展とともに人口が増加し、中小の工場や住宅が密集する地域となりました。児童数の増加により矢向小学校はマンモス校となり、二部授業が行われた時期もありました。1962年に矢向中学校が開校し、1968年に住居表示が実施されて、矢向町は現在の矢向一丁目から六丁目となりました。1969年には矢向町が廃止されました。1975年には尻手駅西側の一部が川崎市から編入され、1995年には新鶴見小学校が開校しました。この頃から大規模マンションの建設が進み、人口が大きく増加しました。

世帯数と人口

2024年4月30日現在の世帯数と人口は横浜市から発表されています。

国勢調査による人口と世帯数の推移は以下の通りです。

学区

市立小・中学校に通う場合の学区は、2023年4月時点で以下のようになっています。

事業所

2021年現在の経済センサス調査によると、事業所数と従業員数は以下の通りです。

経済センサスによる事業所数と従業員数の推移は以下の通りです。

交通

鉄道

南武線：矢向駅、尻手駅

道路

国道1号（尻手・元宮との境界）
県道140号川崎町田線（尻手黒川道路）

バス

川崎鶴見臨港バス：川51、川53、川54・川55、川56・川57、川61、川69
横浜市営バス：18系統

地区

矢向一丁目：品鶴線の西側に位置し、矢向中学校があります。新鶴見小学校の校区で、東洋製罐横浜工場があります。
矢向二丁目：尻手駅の南西側で、尻手駅前郵便局があります。JR東日本の施設も多くあります。
矢向三丁目：二丁目の北、四丁目の西側に位置し、矢向小学校や警察署などがあります。
矢向四丁目：南武線の両側にまたがり、良忠寺や最願寺などの古い寺社があります。尻手駅西側の一部は川崎市から編入された地域です。
矢向五丁目：矢向駅の東側に位置し、商店街があります。
矢向六丁目：矢向駅や商店街、郵便局があり、トオカツフーズの工場があります。

隣接する地区

鶴見区：江ケ崎町、上末吉、下末吉、元宮、尻手
幸区：新小倉、東小倉、小倉、塚越、戸手本町、神明町、南幸町

その他

郵便番号：230-0001（鶴見郵便局管轄）
警察：鶴見警察署が管轄しています。

参考文献

横浜市立矢向中学校郷土史編集委員会 編『矢向のはなし』横浜市立矢向中学校二十周年記念事業運営委員会、1985年。
横浜市市民局 (2016年6月)“横浜市町区域要覧”

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