矢野玄道

矢野玄道（やの はるみち）

矢野玄道は、江戸時代後期から明治時代にかけて活躍した国学者・神道学者です。文政6年（1823年）に伊予国（現在の愛媛県）で生まれ、明治20年（1887年）に亡くなりました。幼名を茂太郎といい、敬逵という名も持ちます。道号として天放散人、子清など、多くの別名を用いていました。

生涯

玄道は、幼少の頃から学問に励み、特に国学に強い関心を抱いていました。1833年、父の勧めで平田篤胤に入門し、国学を本格的に学び始めます。その後、松山の日下伯巌の塾で学び、19歳で扶桑真人倚松と号しました。

1844年には、西国各地を巡り、神社や古跡を訪ね歩き見聞を広めました。1845年には京都に上洛し、新宮涼庭の塾に入り、伴信友や八田知紀といった学者と交流を深めました。1847年に平田篤胤に正式に入門し、昌平坂学問所でも学びました。

1852年には皇学所設置の建白書を提出し、1855年から終生の著作となる『皇典翼』の執筆を開始しました。1867年、建白書が朝廷で議論され、設置の方向で話が進められました。明治維新後、1870年に東京に召され、大学中博士となり、従六位に叙せられます。しかし、1871年に二卿事件への関与が疑われ、故郷に蟄居することになります。

1877年、病床で『魂神要論』と『本教学柱』を著し、太政官修史館御用掛に任じられます。1882年には皇典講究所の初代学部長に就任し、1883年には宮内省御系譜掛となります。1886年に帰郷し母親の介護をしていましたが、その母の死後、1887年に亡くなりました。1937年には、その功績が認められ従五位が追贈されています。

人物像

玄道は、老荘思想の影響を受けて、名誉や地位を求めず、生涯独身を貫き、国学の研究に打ち込みました。読書を通じて得た知識や学者の考えを書き留めることを怠らず、その博覧強記ぶりは、筆写した書物が700巻にも及ぶことからも窺えます。彼が収集した蔵書や論考は、子孫によって大洲市立図書館の矢野文庫に寄贈され、大切に保存されています。

著作

玄道は、多くの著作を残しました。主なものとして、以下のものがあげられます。

『皇典翼』
『三條大意』
『魂神要論』
『本教学柱』
『続皇国神仙記』

参考文献

『矢野玄道先生没百周年記念誌』
『新注皇学叢書』 物集高見編集
『類別異境備忘録』 清水宗徳著
『矢野先生略傳料』
『百日参籠』 木野戸勝隆著
『矢野玄道の本教学』 越智通敏著

関連人物

六人部是香
平田鐵胤
角田忠行
常磐井精才
副島種臣
木野戸勝隆
井上頼国
渡辺重石丸
美甘政和
物集高見

外部リンク

美術人名辞典>矢野玄道
* 大洲市公式ページ>矢野玄道

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