知覧城

知覧城の歴史

知覧城は、鹿児島県南九州市知覧町永里に位置する中世の山城であり、その歴史は平安時代末期にまで遡ります。この地に初めて城を構えたのは、郡司であった知覧忠信と伝えられています。その後、室町時代に入ると足利尊氏の命により、島津忠宗の三男である佐多忠光がこの地の領主となりました。しかし、島津氏の内紛によって一時的に伊集院頼久一族の支配下に入ります。

1420年（応永27年）には、島津久豊が伊集院一族から城を奪還し、再び佐多氏の居城となりました。文禄検地などによる多少の変動はあったものの、佐多氏は幕末まで知覧の領主としてこの地を統治しました。しかし、11代当主・佐多久達の時代に、原因不明の火災によって知覧城は焼失し、一国一城令の発令を待たずして実質的に廃城となりました。

2017年（平成29年）4月6日には、その歴史的価値が認められ、続日本100名城（198番）に選定されました。

城郭の特徴と遺構

知覧城は、火災によって当時の建造物は完全に失われていますが、その後の大規模な改修がほとんど行われなかったため、南九州における中世城郭の典型的な姿を今に伝えています。城跡は、シラス台地を利用した南北約800メートル、東西約900メートル、総面積約45万平方メートルにも及ぶ広大な規模を誇ります。城郭の構造としては、大きな谷を天然の空堀として利用し、本丸以外の曲輪は二重の深い空堀で囲まれていました。

城の中核である「本丸」を中心に、「今城」「蔵の城」「弓場城」などの曲輪が配置され、さらに「式部殿城」「児城」「東之栫」「西之栫」「南之栫」「伊豆殿屋敷」といった出城が設けられていました。これらの配置は、当時の軍事的な戦略や地形を考慮したものであり、中世の城郭構造を知る上で非常に重要な要素となっています。

近年の発掘調査では、15世紀から16世紀にかけての中国陶磁器や洪武通宝、東南アジアで生産された陶器などが多数出土しており、当時の交易や文化交流の状況を物語っています。これらの出土品は、城が単なる軍事施設ではなく、文化的な交流の場でもあったことを示唆しています。

知覧城は、その歴史的背景と独特な構造から、日本の城郭研究において重要な位置を占めています。特に、南九州における中世城郭の典型例として、その価値は高く評価されています。

関連情報

• - 日本の城一覧
• - 九州・沖縄地方の史跡一覧
• - 知覧城跡 - 国指定文化財等データベース（文化庁）

もう一度検索