シラス台地

シラス台地とは

シラス台地は、九州南部に広がる火山噴出物によって形成された台地です。その特徴的な地形は、火砕流台地であり、加久藤カルデラ、阿多カルデラ、姶良カルデラなどの大規模なカルデラを起源とするシラスや溶結凝灰岩で構成されています。鹿児島県本土の約52%、宮崎県の約16%を占める広大な面積を誇ります。

分布と地形

薩摩半島南部には南薩台地、大隅半島中部には大根占台地、笠野原台地などの平坦なシラス台地が広がっています。薩摩半島中部には中薩台地、大隅半島北部から鹿児島湾北部にかけては曽於台地や姶良台地が分布し、これらの地域では台地と谷が複雑に入り組んだ地形が見られます。中薩台地には吉野台地や恋之原、姶良台地には十三塚原、春山原、須川原などが代表的です。川内川流域には狭小な台地が点在しています。

シラス台地の最上部は台地面と呼ばれ、非常に平坦な地形が特徴です。台地面の高さはカルデラからの距離に応じて緩やかに低くなる傾向があります。この台地面は火砕流が堆積した直後の地形をほぼそのまま残していると考えられています。台地面には幅広で浅い谷が存在し、これはシラス台地形成直後の洪水によって形成されたと考えられています。また、台地面の縁には段丘が見られます。

シラス台地の縁は急峻な崖になっており、地元では「ホキ」または「ホッ」と呼ばれるガリ地形が多く見られます。乾燥したシラスは強度が比較的高く、崖も安定していますが、水分を含むと強度が低下し、大雨などで崩壊しやすくなります。崖の下には河岸段丘や氾濫原からなる深い谷があり、この谷は川の浸食によって形成されたと考えられています。

地質

九州南部では、鮮新世から完新世にかけて大規模な噴火が繰り返されてきました。現在のシラス台地は、主に加久藤火砕流（約33万年前）、阿多火砕流（約11万年前）、入戸火砕流（約3万年前）によって形成されました。特に、入戸火砕流の堆積物は広範囲に分布し、厚い層を形成しています。これらの地層に加えて、アカホヤや、桜島、霧島山などの火山噴出物が積み重なっています。

シラス台地の内部構造は、主に以下の3つのタイプに分類されます。

笠野原型: シラスが主体で構成されるタイプで、笠野原台地などが該当します。
十三塚原型: シラスと溶結凝灰岩が交互に層をなすタイプで、十三塚原などが該当します。
* 南薩台地型: 厚い溶結凝灰岩層の上に薄い火山灰層が重なるタイプで、南薩台地などが該当します。

開発

シラス台地は水が浸透しやすく、台地上には水源がほとんどありません。しかし、周辺部には多くの湧水が存在しており、特に菱田川流域には豊富な湧水が見られます。湧水は、笠野原型では谷底近く、十三塚原型では谷底と溶結凝灰岩の境界層付近に見られます。湧水を利用した低地では弥生時代から水田が開かれていましたが、台地上での開発は中世まで進みませんでした。

近世以降、特にサツマイモの栽培が始まってから開発が急速に進み、ダイズ、アブラナ、陸稲なども栽培されるようになりました。サツマイモ、ダイズ、アブラナは、シラス台地の三大作物として普及しました。開発には水の確保が課題で、井戸を掘ったり、水を運搬したりするなどの工夫が必要でした。

明治維新以降には大規模な開発が進められ、第二次世界大戦後にはダムなどの水源を利用した灌漑が行き渡るようになりました。商品性の低いダイズやアブラナに代わり、ダイコン、ニンジン、キャベツなどの野菜や茶が栽培されるようになりました。

また、シラス台地の崖は掘削しやすいため、多くの洞穴（ガマ）やトンネルが作られ、貯蔵庫や用水路などに利用されてきました。トンネルは「ヌキ」と呼ばれ、農業用水路として利用されるなど、人々の生活に密接に関わってきました。

住宅地としての利用は、かつては水源不足や交通の便から不向きとされていましたが、昭和30年代以降、家屋の強度向上や自家用車の普及などにより、宅地開発が進められました。紫原団地がその代表的な例です。

文化

シラス台地が分布する地域は、江戸時代以前において薩摩藩の領地と重なり、その特殊な地形が薩摩藩の独自性を形成する一因になったと考えられています。急な坂は郷中教育における登山鍛錬の場として利用されました。

シラス台地は山城としても利用されており、知覧城、高山城、志布志城などがその代表例です。急峻な崖は天然の防御壁となり、中世以前においては、不毛な台地は兵を進めることを困難にしたと考えられています。

シラス台地は、その独特な地形と歴史が、この地域の人々の生活や文化に深く根付いています。

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