石城山神籠石

石城山 神籠石（いわきさんこうごいし）

石城山神籠石は、山口県光市にある古代山城の遺跡です。国の史跡に指定されており、その特異な構造から古代史研究において重要な場所とされています。

概要

石城山神籠石は、標高362メートルの石城山の八合目付近に、鉢巻状に巡らされた城壁が特徴です。この城壁は総延長約2.6キロメートルに及び、石城山の五つの峰（高日ヶ峰、鶴ヶ峰、大峰、月ヶ峰、星ヶ峰）を取り囲むように築かれています。城壁は、標高268メートルから342メートルの間に土塁が巡り、その土塁に沿って列石が配置されています。

築城主や築城年は、日本書紀などの歴史書に記録がないため不明ですが、7世紀後半に起こった白村江の戦いでの敗北を契機に、防衛のために築かれたと考えられています。この時期は、日本が唐・新羅連合軍の侵攻に備えて国防を強化していた時期にあたります。

城壁には、谷を横切る場所に4か所の石塁と水門が設けられ、東門と北門の2か所に城門が開いています。列石は、石城山で切り出された縦70cm×幅50～100cm×厚さ40～60cmほどの切石が用いられており、土塁の土留めとしての役割を果たしています。発掘調査により、当初は列石が土塁に埋没していたことが明らかになっています。

土塁は高さ約8メートル前後で、壁面は60～90度で立ち上がっており、斜面を削って基礎を固め、列石を並べた上に版築土で盛り上げて作られた内托式の版築土塁です。北門には、沓石と呼ばれる門の礎石がありますが、片方は尾根に移されています。この沓石にはコの字型のくり抜きがあり、瀬戸内地方の神籠石に共通する特徴となっています。

2004年の集中豪雨で石垣の一部が崩落しましたが、2006年までに修復が行われました。修復箇所は、基底部に御影石を使用し、イタビカズラの植生土嚢で覆うことで、現存の遺構と区別しています。

神籠石を有する自治体が集まり、2007年には「神籠石サミット」が開催され、石城山山頂広場には記念碑も設置されています。

調査・研究

石城山神籠石の存在は、1909年に西原為吉によって学会に紹介されました。その少し前の1898年には、高良山の列石遺構が紹介され「神籠石」という名称が定着しており、石城山の遺構も「石城山神籠石」として、1935年に国の史跡に指定されました。

1963年から1964年にかけて行われた発掘調査では、文化財保護委員会、山口県教育委員会、大和村教育委員会によって、神籠石が土塁を巡らせた古代山城の遺跡であることが確認されました。この調査は、これまでその性格が曖昧であった神籠石に対する学術的な解明を進める上で、重要な役割を果たしました。

2009年には、第1回神籠石サミットに合わせて、1963年から1964年の発掘調査の概要をまとめた「石城山神籠石第一次・第二次調査概要書」が発行されました。この概要書には、発掘調査の記録だけでなく、現在の遺構の写真なども含まれています。

神籠石は、「古代山城」であるという説と「古代霊域跡」であるという説が対立していましたが、石城山神籠石と、おつぼ山神籠石の発掘調査によって、「山城」説が有力となりました。

現地情報

石城山神籠石は、「石城山県立自然公園」内に位置しており、史跡公園としても整備されています。駐車場などの施設も完備されており、遊歩道に沿って歩けば、城跡の遺構を見学できます。

最寄りの駅はJR岩田駅で、そこからタクシーで約20分、山陽自動車道の熊毛インターチェンジからは車で約30分です。

また、城域内には、国の重要文化財である本殿を有する石城神社や、長州藩の「石城山第二奇兵隊駐屯地跡」もあります。

まとめ

石城山神籠石は、古代の歴史とロマンを感じられる貴重な遺跡です。その独特の構造や歴史的な背景を知ることで、古代日本の国防や文化に対する理解を深めることができます。訪れる際には、ぜひゆっくりと時間をかけて、この神秘的な場所を堪能してください。

参考資料

文化庁文化財部監修「月刊文化財」631号（古代山城の世界）、第一法規、2016年4月。
小田富士雄編『季刊考古学』136号（特集西日本の「天智紀」山城）、雄山閣、2016年7月。ISBN 9784639024286。
齋藤慎一、向井一雄『日本城郭史』吉川弘文館、2016年12月。ISBN 978-4-642-08303-4。
向井一雄『よみがえる古代山城国際戦争と防衛ライン』吉川弘文館〈歴史文化ライブラリー〉、2017年1月。ISBN 978-4-642-05840-7。
『日本書紀』 3巻、小島憲之他校注・訳、小学館〈新編日本古典文学全集 4〉、1998年6月。ISBN 4-09-658004-X。
西谷正編『東アジア考古学辞典』東京堂出版、2007年5月。ISBN 978-4-490-10712-8。

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