石手寺

石手寺（いしてじ）

石手寺は、愛媛県松山市にある真言宗豊山派の寺院です。熊野山、虚空蔵院と号し、本尊は薬師如来。四国八十八箇所霊場の第五十一番札所として、多くの参拝者を集めています。遍路の元祖とされる衛門三郎の再来伝説ゆかりの寺としても知られています。

道後温泉からも近く、観光客も多く訪れる石手寺は、2009年にはミシュランガイド（観光地）日本編で一つ星に選定されました。その歴史と文化、美しい景観は訪れる人々を魅了し続けています。

歴史

寺伝によれば、石手寺は神亀5年（728年）に越智玉純が夢のお告げによりこの地を霊地と悟り、熊野十二社権現を祀ったのが始まりとされています。聖武天皇の勅願所となり、天平元年（729年）に行基が薬師如来を刻んで本尊として安置し開基したと伝えられています。当初は安養寺という名で法相宗の寺院でしたが、弘仁4年（813年）に空海（弘法大師）が訪れて真言宗に改宗しました。

寛平4年（892年）には、領主・河野息利の子、息方が当寺で祈祷を受けた際、「衛門三郎再生」と書かれた石が現れたという伝説が生まれ、これによって寺名が石手寺に改められました。平安時代から室町時代にかけて河野氏の庇護を受け、七堂伽藍六十六坊を数える大寺院として最盛期を迎えましたが、永禄9年（1566年）に長宗我部元親の兵火により多くの建物を焼失しました。しかし、本堂、仁王門、三重塔は焼失を免れ、現在もその姿を見ることができます。

境内

石手寺の境内には、国宝や重要文化財を含む多くの文化財が点在しています。

仁王門（山門）【国宝】：鎌倉時代の様式を伝える楼門で、石手寺の象徴とも言える存在です。
本堂【重要文化財】：本尊の薬師如来坐像が安置されています。かつては文殊菩薩が本尊でしたが、熊野三所権現を祀る熊野権現社を経て、現在は薬師堂となっています。
大師堂：弘法大師像を祀るお堂で、かつては正岡子規や夏目漱石らの落書きが壁に記されていたことから「落書堂」とも呼ばれていました。現在は白いボードが設置され、自由に落書きができます。
訶梨帝母天堂【重要文化財】：鬼子母神を祀る祠で、妊婦が安産を祈願する風習があります。
一切経堂：輪蔵と傳大士を祀るお堂です。
護摩堂【重要文化財】：不動明王立像と二童子が安置されています。
弥勒堂：知足天の扁額が掲げられています。
鐘楼（袴腰造）【重要文化財】：元弘3年（1333年）建立の鐘楼で、住職のみが鐘を撞くことができます。
三重塔【重要文化財】：四国八十八箇所のお砂踏みができます。

その他にも、本殿、阿弥陀堂、愛媛パゴダ、観音堂、釈迦堂、毘沙門天祠、絵馬堂、十二社権現の祠、穴地獄の祠、水天堂、弁財天の祠、マントラ洞窟、大講堂、宝物館、仏陀研究館、安養閣、大日曼荼羅石像群など、多くの堂宇や施設があります。

石手寺の七不思議

石手寺には、古くから語り継がれる七つの不思議があります。

1. 渡らずの橋
2. 不動石
3. 仁王門の大草鞋
4. 香煙
5. 水天堂の水瓶
6. 詞梨帝母天堂の子授かりの石
7. 湯音石

これらの不思議を巡るのも、石手寺参拝の楽しみの一つです。

文化財

石手寺は、数多くの文化財を所有しています。

国宝
仁王門
重要文化財
本堂
三重塔
訶梨帝母天堂
鐘楼
護摩堂

行事

石手寺では、年間を通して様々な行事が行われています。

練供養：毎年4月4日に行われる、諸仏の来迎を再現する儀式です。

交通

伊予鉄道城南線（路面電車）：道後温泉駅下車、徒歩約1.3km
伊予鉄バス：石手寺バス停下車
* 自動車：松山自動車道松山ICから約6.5km

石手寺は、四国霊場巡礼の道場としてだけでなく、歴史と文化に触れることができる観光スポットとしても魅力的な場所です。ぜひ一度、足を運んでみてください。

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