石本秀雄

石本秀雄：日本の映画撮影技師の巨匠

石本秀雄（いしもとひでお、1906年8月18日 - 1965年10月5日）は、日本の映画史に名を刻む撮影技師です。本名は藤井秀雄。サイレント映画全盛期から戦後にかけて、数多くの名作映画の撮影に携わった彼の生涯は、日本の映画発展の歴史そのものです。

マキノ映画での研鑽

1906年、兵庫県洲本市に生まれた石本は、旧制滝川中学校を中退後、1922年、牧野教育映画製作所（後のマキノ映画製作所）に入社します。田中十三らベテランの助手として撮影技術を磨き、マキノ映画製作所、東亜キネマと会社が変遷しても撮影助手として経験を積みました。1925年、マキノ・プロダクション設立と同時に御室撮影所へ移り、同年には助手に昇進。富沢進郎監督作品『猿』で撮影助手としての実績を積み重ね、橋本佐一呂監督作品『呑喰気抜之助』などにも参加します。1926年、衣笠貞之助監督の『天一坊と伊賀之亮』で念願のキャメラマンとして独立を果たします。この作品は、後に語られることになる彼の「化け物騒動」の舞台でもあります。1927年からは、マキノ傘下の勝見庸太郎プロダクションの作品にも多数参加しました。

千恵プロでの活躍と日活、大映へ

1928年、片岡千恵蔵、嵐長三郎（嵐寛寿郎）、中根龍太郎ら多くの俳優がマキノを退社して日本キネマ撮影所を設立した際、石本もマキノを退社し、片岡千恵蔵プロダクション（千恵プロ）の創設メンバーとなりました。千恵プロ設立第1作『天下太平記』から、1937年の第百作記念作品『浅野内匠頭』まで、稲垣浩監督の『瞼の母』『一本刀土俵入』、伊丹万作監督の『國士無双』、山中貞雄監督の『雁太郎街道』など、日本映画史に残る名作の撮影に携わります。

1937年、千恵プロ解散に伴い、日活京都撮影所へ移籍。片岡千恵蔵主演作品を中心に撮影を続け、マキノ正博監督作品『弥次㐂夛道中記』『弥次喜多 名君初上り』なども担当します。1941年の戦時統合で日活が大映に合併した後も、片岡や稲垣らと共に大映に残りました。戦後間もない1945年には、阪東妻三郎主演の『狐の呉れた赤ん坊』の撮影で高い評価を受けます。

東横映画、松竹での晩年と死去

1950年、『われ幻の魚見たり』を最後に大映を退社。東横映画を経て、松竹京都撮影所に移籍します。1962年、『義士始末記』を最後に56歳で引退。その後、1965年10月5日、肺がんのため59歳で亡くなりました。

人物像とエピソード

石本秀雄は、サイレント映画時代から卓越した技術を持つ撮影技師として知られていました。特に片岡千恵蔵主演作品を多く担当し、日本の映画界を代表するカメラマンの一人として名を馳せました。彼の高い技術と優れた人柄は、多くの関係者から賞賛を集めていました。

前述した『天一坊と伊賀之亮』での出来事や、太秦の撮影所周辺の竹藪で起きた「狸事件」など、数々の逸話は、彼の個性的な一面を垣間見せてくれます。

主なフィルモグラフィー

石本秀雄は、数多くの映画作品で撮影を担当しました。その中には、サイレント映画から戦後の作品まで、様々なジャンルと監督の作品が含まれています。代表作としては、『猿』『呑喰気抜之助』『お止めなさいよ人の噂は』『天一坊と伊賀之亮』『天下太平記』『瞼の母』『一本刀土俵入』『國士無双』『雁太郎街道』『浅野内匠頭』『弥次㐂夛道中記』『弥次喜多 名君初上り』『狐の呉れた赤ん坊』『われ幻の魚見たり』『レ・ミゼラブル あゝ無情』『おぼろ駕籠』『義士始末記』などがあり、これら作品は日本の映画史において重要な位置を占めています。

石本秀雄は、日本の映画撮影技師として、その技術と功績は後世に長く語り継がれるべき存在です。

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