砂原格

砂原 格（すなはら かく）

日本の実業家、政治家。明治35年（1902年）4月3日生まれ、昭和47年（1972年）5月8日没。衆議院議員を6期務め、実業家としても砂原組の創業者として知られます。

生涯

現在の広島市安佐北区にあたる広島県高田郡白木町の農家に生まれました。高等小学校を卒業後、しばらくは家業である農業に携わりましたが、強い自立心を胸に抱き、若くして広島市へと移ります。当地では数々の困難や苦労を経験しましたが、来るべき未来を見据えて着実に歩を進めました。そして22歳になった大正13年（1924年）、土木建築事業を立ち上げ、大和商事（後の砂原組）を設立。これが実業家としての彼の第一歩となりました。

事業は次第に拡大し、砂原組を中心に様々な分野で活躍の場を広げました。その間、広島商工会議所の副会頭を務めるなど、地方産業界の重鎮としても指導的な役割を担いました。

昭和20年（1945年）8月6日、広島市八丁堀の自宅で原子爆弾の投下により被爆しましたが、奇跡的に一命を取り留めます。焦土と化した故郷・広島の惨状を目の当たりにし、その復興こそが自身の使命であると強く感じた砂原は、その後、政治の世界に進むことを決意します。

まず広島市議会議員、続いて広島県議会議員として地方政治に携わり、その実績を積み重ねた後、衆議院議員に初当選を果たしました。衆議院議員としては広島県第1区を地盤とし、特に3歳年上の灘尾弘吉氏とは常に激しい選挙戦を展開しましたが、惜しくも灘尾氏に次ぐ得票となることが多かったようです。しかし、その粘り強い活動により、通算6回の当選を重ねるに至りました。

政治家としては、自由党、日本民主党を経て自由民主党に所属し、自民党の副幹事長という要職も経験しました。また、厚生政務次官、通商産業政務次官をそれぞれ務め、国政の場でもその手腕を発揮しました。衆議院では、運輸委員会委員長や逓信委員会委員長といった委員長職も歴任するなど、幅広い分野で活動しました。

昭和47年（1972年）5月8日、衆議院議員の現職のまま病のため死去しました。享年70歳。その死後、長年の功績が認められ、勲二等旭日重光章が追贈されました。

人物

砂原格氏は、一代で砂原組を築き上げた企業家であると同時に、広島原爆の被爆者であり、戦後復興に身を捧げた政治家です。高等小学校卒業という学歴ながら衆議院議員にまで上り詰めたことから、地元広島では「立志伝中の人物」として多くの人々に知られていました。

被爆者としての経験から、平和への願いと被爆者への深い思いを強く持っており、広島東照宮の参道に原爆慰霊碑を建立するなど、その思いを行動に移しました。昭和49年（1974年）5月には、彼の功績を記念して広島市の京口門公園に銅像が建てられました。この銅像の題字は、後に内閣総理大臣となる福田赳夫氏によって揮毫され、胸像建設委員会の代表は森本亨氏が務めました。

昭和47年（1972年）5月23日、衆議院本会議場で行われた同郷のライバルであり、日本社会党所属の衆議院議員であった大原亨氏による追悼演説は、砂原氏の人柄や政治家としての歩みを温かく振り返る内容で、多くの人々の感動を呼びました。また、彼の死後、砂原氏を慕う人々によってその生涯や功績をまとめた「砂原格追想録」が出版されています。

宗教は真宗を信仰し、謡曲や釣りを趣味としていました。

家族・親族

妻との間に三人の子をもうけました。長男の克行氏は広島県議会議員を務めましたが、平成9年（1997年）に亡くなっています。孫にあたる克規氏も政治の道を志し、明治大学卒業後に企業勤務を経て砂原組に入社。その後、広島県議会議員に当選し、祖父、父に続いて地方政治家となりました。しかし、令和元年（2019年）の参院選を巡る大規模買収事件に関与したことを認め、令和4年（2022年）3月に県議を辞職しています。克規氏の長男である砂原崇弘氏も現在、広島県議会議員を務めており、砂原家は三代にわたり広島県の政治に関わっています。

砂原格氏の元秘書である平野博昭氏も、後に広島市議会議長を務めるなど、彼の活動は多方面に影響を与えました。

参考文献：

帝国秘密探偵社編『大衆人事録 第14版　近畿・中国・四国・九州篇』帝国秘密探偵社、1943年。
衆議院、参議院編『議会制度七十年史 第11』大蔵省印刷局、1962年。

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