神大寺

神大寺（かんだいじ）

神奈川県横浜市神奈川区に位置する神大寺は、古くは「神大寺村」と呼ばれていました。現在は一丁目から四丁目までが住居表示されており、横浜市の中でも古い歴史を持つ町の一つです。この記事では、その概要から歴史、文化、そして現在の姿までを詳しく解説します。

概要

神大寺は、神奈川区の中央部に位置し、六角橋と片倉の間に広がっています。かつては農地と住宅が混在していましたが、現在では住宅地としての側面が強くなっています。戦前には「神臺地」や「神代寺」、「神太寺」とも表記されていました。

最寄りの駅は、横浜市営地下鉄ブルーラインの片倉町駅、三ツ沢上町駅、三ツ沢下町駅、そして東急東横線の白楽駅、反町駅です。また、横浜市営バスも利用でき、横浜駅方面へのアクセスも便利です。

昭和30年代までは、横浜の純農村地域で、約30戸の農家が里山の麓に集まって生活していました。江戸時代から稲作や畑作が盛んに行われていましたが、水田の多くは「谷戸田」と呼ばれる湿田で、米の収量はそれほど多くありませんでした。大正から昭和にかけては、丘陵地で黒葉大根が特産品として栽培されていました。

現在、片倉と六角橋を結ぶ道路は、昔は牛車が行き交う道でしたが、現在は自動車が頻繁に通る道となっています。かつては湧水が流れ込む「滝の川」がありましたが、現在は暗渠化されています。神大寺小学校や商業施設がある場所は、かつては水田が広がり、夏には蛙の鳴き声が響く場所でした。

2006年現在でも、町内には「農業振興地域」や「生産緑地地区」として指定された場所があり、都市農業が積極的に行われています。戦後、市街地に住んでいた人々が移り住んできたことで住宅化が進み、昭和40年代には大型団地が建設され、町の景観は大きく変化しました。

神大寺は隣接する片倉や六角橋と同様に、坂道が多い地域です。特に六角橋とは地域的なつながりが深く、六角橋中学校の一部が神大寺四丁目に食い込んでいるなど、複雑な行政区画となっています。また、神大寺から離れた場所にある神橋小学校は、神大寺町と六角橋の間に位置することからその名が付けられました。

地区内には、スーパーやコンビニエンスストアなどの商業施設がありますが、近隣には六角橋商店街やその他の商業施設もあります。

地価

2024年 1月1日の公示地価によると、神大寺3-21-7の地点で1平方メートルあたり30万円となっています。

歴史

神大寺の最も古い記録は、「小田原記」に、1537年に上杉朝定が北条氏綱を攻める際に、この地に要害を築いたという記述です。

江戸時代には、「新編武蔵風土記稿」に、神大寺村は26軒の民家が点在し、天水に頼っていたため、干害に悩まされていたと記されています。

1476年：太田道灌が小机城攻めの際に軍を率いて休息したとされ、その場所は「道灌森」と呼ばれています。
江戸時代：橘樹郡神太寺村として、幕府の直轄地となり、神奈川宿の助郷を務めていました。村の石高は86石余りでした。
1659年：六角橋村との間で入会馬草場を巡る争いが起こり、片倉村などが仲裁に入りました。
1708年：富士山の噴火による火山灰で耕作不能になり、名主が幕府に年貢半減を嘆願しました。
1833年～1839年：天保の大飢饉が発生し、村は保存していた米で飢えをしのぎました。
1867年：戊辰戦争では、幕府軍の農兵隊に組み込まれました。
1878年：郡区町村編制法により、橘樹郡小机村の大字となりました。当時の人口は161人でした。
1892年：小机村が城郷村に改称され、神大寺は城郷村の大字となりました。
1927年：横浜市に編入され、横浜市神大寺町となりました。その後、区制施行により神奈川区に編入されました。
1943年頃：宅地化が徐々に進み始めました。
1952年：市営バスが開通し、「神大寺」停留所が設置されました。
1954年：市営住宅の建設が始まり、農村と都市が混在するようになりました。
1961年：神橋小学校神大寺分校が独立し、横浜市立神大寺小学校が創立されました。
1965年：六角橋地区の住居表示実施に伴い、一部が六角橋五丁目に編入されました。
1960年代後半：片倉台団地が建設されました。
1970年代前半：横浜ハイタウン、南神大寺団地が建設されました。
1970年：三ツ沢地区の住居表示実施に伴い、一部が編入されました。
1971年：人口増加により、横浜市立中丸小学校が創立されました。
1974年：南神大寺小学校が創立されました。
1980年代前半：西神大寺団地が建設されました。
1984年：滝野川が暗渠化されました。住居表示実施により、神大寺一丁目から四丁目が新設され、神大寺町は廃止されました。

地名の由来

神大寺の地名は、戦国時代に小机城主の笠原越前守信為が、亡父の供養のためにこの地に寺を建てたことに由来します。寺は後に小机に移り、現在の雲松院となりました。寺は無くなりましたが、その寺号が地名として残ったと伝えられています。

神大寺の正確な場所は不明ですが、町の中央付近にある「塩嘗地蔵」の周辺ではないかと推測されています。この地蔵の近くからは、戦時中に骨壷と六文銭が発見されました。

神大寺は、神奈川大学の略称である「神大（じんだい）」と似ているため、誤って「じんだいじ」と読まれることが多いですが、関連はありません。

笠原信為

笠原信為は、戦国時代の武将で、北条氏綱に仕えました。小机城代となり、神大寺の開基となりました。死後、菅田で火葬され、神大寺に葬られました。

行事

神大寺では、古くから五穀豊穣を願う様々な行事が行われています。

重陽の節句：かつては9月19日に行われていました。これは、かつてこの地を治めていた武将が9月9日に亡くなったため、その日を避けたためと伝えられています。
盆踊り：神大寺音頭に合わせて踊ります。かつては日枝橋の上で行われていました。
日枝神社祭礼：豊作の年のみ行われていましたが、現在は毎年行われています。神大寺囃子があります。
地神講：春と秋の彼岸近くに、集落の家々で土地の神様を祀り、豊作を祈願します。
稲荷講：2月の初午の日に、稲荷に詣で豊作を祈ります。
恵比寿講：竃の神を祀り、一年の無事を感謝します。
庚申講、念仏講：地域で受け継がれる講です。
ミカリバアサン：毎年12月4日の夜には、妖怪ミカリバアサンが来るとされ、農作物などを家に入れ、お団子を門口に飾ります。

世帯数と人口

2024年 6月30日現在、世帯数は5,228世帯、人口は10,917人です。

学区

市立小中学校の学区は以下の通りです。

神大寺一丁目：神大寺小学校、六角橋中学校
神大寺二丁目：南神大寺小学校、六角橋中学校
神大寺三丁目：神大寺小学校、中丸小学校
神大寺四丁目：中丸小学校、六角橋中学校

事業所

2021年の経済センサス調査によると、事業所数は277、従業員数は2,192人です。

施設

神大寺一丁目

ローソン横浜神大寺一丁目店
甚行寺墓地

神大寺二丁目

横浜市神大寺地区センター
横浜市神奈川土木事務所
UR南神大寺団地
横浜市立神大寺保育園
神大寺幼稚園
横浜市立南神大寺小学校
ユーコープ神大寺店
JA横浜神奈川支店
Big-A横浜南神大寺団地店

神大寺三丁目

横浜市立神大寺小学校
横浜市立中丸小学校
神大寺中央公園
紫雲会横浜病院

神大寺四丁目

横浜神大寺郵便局

旧跡

かつて農村だった時代の名残が、地名や史跡に残っています。

日枝橋
日枝神社
塩嘗地蔵
庚申塔
地神塔
馬頭観音
九養塚
滝野川
鎌倉街道
八王子往還

旧小字

かつての地名には、谷戸など地形を表すものが多いです。

道灌森
市蔵谷戸
磔原
鍋谷窪
カマスッ原
ゲタ藪

以下は住居表示実施直前まで存在した字です。

池谷
長山
赤田谷
南原
前耕地
西原
中丸
東谷
北原

その他

郵便番号：221-0801（神奈川郵便局管轄）
警察：神奈川警察署の管轄

参考文献

「神太寺村」『新編武蔵風土記稿』
「河越城責ル事」『小田原記』
北倉庄一『中世を歩く』
横浜市町区域要覧

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