祭粢料

祭粢料（さいしりょう）とは

祭粢料とは、天皇が亡くなった人に対して下賜する金銭のことを指します。葬儀の際に下賜されるものは、香典にあたるものとされています。

祭粢料の概要

本来、祭粢料は神前に供える供物を意味する言葉でした。しかし、明治時代に入ると、公務中に亡くなった官吏や軍人、幕末の動乱で命を落とした人々に対し、天皇が祭粢料を下賜するようになりました。例えば、元治元年に亡くなった中山忠光には、明治3年に300両が下賜され、明治23年の水戸行幸啓の際には、江戸時代に亡くなった戸田忠太夫、藤田幽谷、藤田東湖、会沢正志斎、安島帯刀らに対し、200円が下賜されています。このように、対象者の死後、時を経てから下賜されることもあります。

栄典制度の整備と祭粢料

明治8年の太政官布告「賞牌従軍牌制定ノ件」を機に、栄典制度が整備されると、勲一等（現在の旭日大綬章）以上の受章者や文化勲章受章者の葬儀には、天皇が金銭を下賜することが制度として確立しました。戦前においては、祭粢料の他にも、勅使の派遣や幣帛の下賜、軍隊からの儀仗兵派遣なども行われていました。

戦後の祭粢料

戦後、「祭粢料」は、一定の基準に基づいて、国家に功労のあった者に対して下賜されるようになりました。具体的には、旧勲一等以上の勲章受章者、文化勲章受章者、文化功労者、国会議員経験者、都道府県知事経験者、大使経験者などが対象となり、文化庁などの所管官庁を通じて与えられます。これは、天皇が公の場で弔意を示すためのものであり、宮廷費から支出されます。
一定の基準を満たす者には、勅使によって遺族のもとへ届けられます。

現在の祭粢料

現在の祭粢料の金額は公表されていません。祭粢料が下賜される際には、「天皇陛下」と書かれた幅10センチ、長さ30センチの紙が共に置かれ、弔問客の目に触れるように配慮されます。

まとめ

祭粢料は、時代とともにその意味合いや対象者が変化してきました。元々は神への供物であったものが、国家への貢献者に対する弔意へと変化し、現在では天皇が故人の功績を讃え、弔意を表すための重要な制度となっています。

参考資料

* 『天皇陛下の全仕事』（山本雅人、2009年、講談社現代新書）ISBN 978-406287977-4

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